ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞した。
単純にうれしいな、と思った。本人は何もコメントしていないし、色々、雑音があるみたいだけど。村上春樹なんぞが取るよりは、何百倍もうれしいし。そう、苦手なんだよね、村上春樹。大学生の時、文学研究会の読書会で、村上作品(短編)を始めて読んだ時に、あの文体に生理的に合わないものを感じ、一行読み進めるのも苦痛、という具合だった。その作品を選んだ、馬面の男子が「こういう文章が、いひひんだよなぁ」と恍惚とした表情で嘶いておったが、どこかいいんだか、人間の言葉ではちっとも説明してくれなかった。感覚的に合わなかったんだろう、私には。で、社会人になってから、「村上春樹が嫌いという人にお勧めの村上作品だから(?)」と勧められた小説も3ページで、投げ出した。萩尾望都の短編『シャンプー』で、主人公が、「村上春樹は・・・5ページ目でザセツして」と言う場面を読んで、私より忍耐強いじゃん、と思ったり。人の好みはそれぞれなので、村上春樹が好きだという人がいるのは一向にかまわないんだけど、なぜ、それが多数派なのかが、さっぱり分からない。
しかも、最後の日本人ノーベル文学賞受賞者が大江健三郎で、若い頃、私は彼のファンだったので、その次に取ってほしくない。間に別の誰かが入ればいい、ってわけでもないけど。高校生の時に『万延元年のフットボール』を読んで、文体が気に入り(てことは、文体が大事なんだ、自分にとっては)、その後、けっこう長い間、コンスタントに彼の作品を読んでいた。で、多感な時期に“脳に障害のある息子”という言葉を繰り返しインプットしたせいで、自分にも発達障害の息子ができたのでは、なんて、おセンチな被害妄想に浸ったことも。
と、横道にそれたが、ボブ・ディランのノーベル文学受賞発表の翌日が、ちょうど月に一度のウクレレの会の日だったので、さっそく、同会主催者Sさんに、「受賞記念に“風に吹かれて”を演りましょう」とメールしたら、速攻で、OKの返事とタブ譜が送られて来た。
ボブ・ディランは、20代前半から聞き始めたと思う。新卒で入った会社を辞めて、ぷーしていた時、晶文社出版(あの晶文社の子会社)で、半年契約で『中学受験案内』というムックを編集するバイトをしたことがあるが、契約期間終了時に、好きな本を一冊あげる、と言われ、『ボブ・ディラン全詩集』か『ヒッチコック・トリュフォー 映画術』でさんざん悩み、結局、ヒッチコックを選んだ記憶がある(両方ともやたらと重い本だ)。確か、最初に買ったボブ・ディランのアルバムが、『Bring It All Back Home』で、デビューアルバムから『New Morning』まで揃えたところで、その後、あまり聞かなくなった。
で、最近、ギターの会で、“Mr.Tambourine man”が課題曲に取り上げられ、懐かしくなり、また、聞きたいな、と思っていたところに、この受賞。
さっそく、iPodにCD『The freewheelin'』(20年前に日本から持って来たCD!)を取り込んで、聞き始める。このジャケットの写真、いいよね。と思っていたら、偶然、子どもの日本語学校で借りて来た、浦沢直樹の『Billy Bat』6巻で、1963年ニューヨークを舞台にしたエピソードに登場していた。50年以上も前のアルバムで、ディランは、今、75歳なのだ、としみじみ。
さて、パリのピラミッド近くのビストロの地下で月1回、ビールを飲みながら(私はカクテル・モナコ)、ウクレレをみんなで、かしゃかしゃとつま弾いていた、このウクレレの会は、今回が最後になるかもしれず。というのも、主催者Sさんが、70歳を目前に、「元気なうちにエレキギターに挑戦する」と宣言し、会の運営を他に引き継ぐ人が出て来ず・・、今のところ。私はこれを機会にギターに専念しようかな、と思ってるし。しかし、元気なうちに挑戦、と言っても、フォークギター、ウクレレ、三線、バンジョーと幾種もの弦楽器を弾きこなしているSさんのことなので、エレキギターなんて、あっという間に上手くなるだろう。でも、ステージ上で踊りながらエレキをかき鳴らす、なんて夢を抱いているなら、確かに、急いだ方がいいかも。
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