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発達障害の息子の高校見学


アスペルガー症候群と診断されている14歳の息子は、今年が中学校の最終学年。ここまでは、学区内の公立校に通い、アシスタントがついて、なんとか普通クラスに在籍している。
今年の9月に、リセに進学するので(落第しなければ)、普通リセかリセ・テクニック(工業高校のようなもの)、または、職業リセなどから、選ぶことになる。

息子は、言語コミュニケーションの障害があり、人の話していることも少し複雑になると理解できない。文章の理解力がなく、音読は、日本語もフランス語もすらすらとできるが、内容がよく把握できない。学校の授業でも、板書はできるが、先生が説明していることをノートすることができず、アシスタントに手伝ってもらっている。

普通リセで授業についていくのは、難しいだろう。特に哲学の授業なんて、とうてい理解できると思えない。まあ、人文系には、間違っても進まない(進めない)だろうが。
また、若者の失業率の高さが深刻なフランスでは、大学を出ても、簡単に仕事が見つからない(日本も同じかもしれないけど)。ノーマルな人(ノーマルの定義なんぞを考えてると、話がそれてしまうので、それはさて置き)でさえ、仕事が見つからないのに、まして、障害を抱えている息子は一体、どうなってしまうのか。障害者雇用枠のことも視野に入れてはいるが、法律もころころ変わるので、息子が社会に出る頃にどういう条件になっているか分からない(景気だってどうなることやら)。とりあえず、今の段階では、科学技術系の専門技術を身につけるためのテクノロジー・バカロレアを目指す、リセ・テクニックに進めればいいな、と思っている。

3月最初の土曜に、中学校で、進学説明会が開かれた。親が説明会に出ている間、子どもたちは、校舎内のカフェテリアで行われる、職業エキスポ(とでも訳しましょうか、Carrefour des métiers)に参加した。

高校見学中学の前
(進学説明会の日は雨)

説明会は、進路選択の目安、各リセの特色、その後の進路などなどについて、校長と進路指導担当がスライドを使って、説明する。1年目は普通リセで、2年目からリセ・テクニックに移ることも可能だということが分かる。

説明会が終わって、職業エキスポ会場へ。子どもたちが、興味のある職業のブース(と言ってもテーブルが置いてあるだけ)を訪れ、その道のプロ(たぶん、市内の企業・団体の人間が中心)に色々と質問をする。息子は、コンピュータ技術者二人と話をしたという。何を聞いたの?と尋ねると、「苦手なものは何ですか、って聞いたら、スポーツだって」。そんなレベルである。
その他に、自動車教習所の教官にも話を聞き、「何歳から運転できますか、って尋ねたら、15歳からだって。他の子は、どんな車に乗るんですか?って質問していた」。訪れた子ども全員が教習所のカードを渡されたそうだ。なるほど、いい宣伝だわ。
高校自動車教習所

(妙に担当者が多い、自動車教習所のブース)

他にも、警察官、消防士、看護アシスタントなどがいた。住宅施工会社の社長(?)は熱心にパネルなんか使いながら、子どもたちに説明をしている。息子は以前、大工になりたいと言っていたので、そのブースにも行ってみようと誘ったが「夢が、変わった」の一言。今は、漫画家かユーチューバ―になりたいらしい。

高校消防士
(消防士は人気職業の一つ)

ブースを訪ねるとそこで、サインをもらい、それを月曜日に、担任に提出することになっている。もう一つくらい回ろう、(きっと多いほど評価が上がるだろうから)ときょろきょろすると、マウンテンバイク専門誌Velo Vertのブースがあり、編集長本人が来ていた。

息子は2年ほど、毎週土曜にマウンテンバイク教室に通っていたが、参加者が少なく、指導者と生徒は息子一人だけ、なんて日もあり、教室が成り立たなくなってしまった。本人もさほど情熱がなく、「自転車はケツが痛くなるから、もういい」の一言で二度と乗らなくなってしまった。
自転車はもちろん、編集の仕事にも興味のない息子に変わって、私が色々質問し(発行部数とか、編集部員の数とか、ありきたりなことを)それでも息子は横で、一応メモらしきものをとっていた。
自分は編集者だけど、息子は、本当は編集には全く興味がなくて、と話すと、編集長氏曰く、「僕も若い頃はアートの勉強をしていたんだけれど、自分には合わないと思って、その後、営業マンとして働くことにしたんだ。この雑誌が、広告営業マンを募集していたから行ってみたら、そこで心の父とも呼べる人に出会って、一から編集のことを学んだ。やりたいことなんて、この年齢じゃ分からないし、決めていたとしても、これから変わるだろうし」。
確かに・・。

高校velo-vert
(編集長と一緒に写真を撮ってもらえばよかったのに、すっかり忘れたので、雑誌Velo vertの表紙)

息子の場合は、障害のせいで、できることが限られているし、やりたいことしかやらないという性格(これも障害のせい?)もあるので、やりたいことで、それに適性があって収入に繋がる何かを見つけてほしいのだが・・。

翌週の土曜日は、学区内のリセ・テクニックの学校見学の日。
校名は、リセ・シャルル・ドゴールなんだけど、住所が、テクノパークとなっている。え?テーマパークの一種?とググってみると、・・要するに企業団地みたいなものなのね。ナビに住所を入れて、我が家から車で15分。

こんな建物であった。

高校見学剣

門を入ると、保護者会のメンバーからチラシを渡され、「分からないことがあったら、何でも質問してね」と言われたので、さっそく、バス路線について聞いてみると、我が家の近くの駅からリセ近くの停留所まで、直通バスがあるはず、と教えられる(家に帰ってwebでチェックしたら、それは隣駅からのバスだったが)。

リセの建物に入ると構内図を渡される。
まずは、息子が興味を持ちそうな、工業技術科学課程の教室に入る。スケートボードにブレーキを付ける研究開発を生徒たちが行っているとかで、技術屋って感じの教師がそれを講義でもするごとく、スライドを見せながら妙に熱く語っていた。一応、息子も何やら、メモを取る。

高校見学剣メモ

次に、数学の教室に入ると、殺人現場に残されていた髪の毛から、犯人を割り出すのに数学を用いる方法なんてものをスライドを使って説明していた。面白そうだけど、実際、授業でこんなことをするのだろうか?息子は、よく分からなかったのか、「あんまり面白くない」と一言。

最後に情報デジタル科学の教室に入ると、数台のパソコンがあって、どうやらプログラミング体験ができるようなのだが、どう見ても小学生にしか見えない子どもが、パソコンに向かっていた。きっと、土曜日なので、教師の誰かが、預ける人がいなくて連れて来たのだろう。一度、役場のカウンター内に小さな子どもがいて、職員が「今日、急に学校が休みで預け先がなくて」と言っているのを聞いたことがあるし。歯医者の予約時間の寸前に秘書から「急に先生が奥様の代わりに子どもを幼稚園に迎えに行くことになったので、30分、予約の時間を遅らせて下さい」なんて電話があったことも。フランスって働く親に寛大な国なのである。結局、パソコンは全部埋まっていたので、プログラミング体験もできず。
見学アンケートを書いて、退散。

高校見学剣建物

家に帰って、資料を見ると、どうやらこのリセでも、科学系と経済・社会系の普通バカロレアは受けられるらしく(人文系はなし)、特にテクノロジー・バカロレアを目指すための高校ではないということが分かる。

しかし、フランスの面倒な教育カリキュラムは、時々、制度も変わるし、日本人の親としては理解するのに一苦労。息子の場合は、発達障害の問題もあるので、さらに複雑になってしまうのであった。

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発達障害の息子、ラグビーを始める

発達障害の息子は、この9月に中学生になったが、悩んだ末に、パリの私立校の特殊学級ではなく、地元公立校の普通クラスに入れることにした。
息子は、情緒障害、特にコミュニケーション障害のために、人とうまく付き合うことができず、友達というものが全くできない。特殊学級では、勉強よりも、コミュニケーション能力や社会スキルを身につけることに重点を置く。ただ、職業訓練高校に入ることを前提としたカリキュラムなので、進路が限られてしまうのだ。社会スキルをしっかり習得し、仕事につながる技術を身につけてくれれば、それでいいという気もするが、小学校では、何とか授業についていき(正しくは、授業を無視して、絵を描いたり、マンガを読んだりしていることが多かったそうだが、テストでは何とか及第点をもらった)、全国テストもフランス語は惨憺たる成績だったが、算数はまあまあで、小学校最終学年の担任からは、教育アシスタントをつけて、普通クラスに入れることを強く勧められた。それで、まずは普通クラスに入れて、様子を見よう、ということになった。

私が繰り返し読んでいる『自閉症感覚 かくれた能力を引き出す方法』の著者テンプル・グランディンは、うちの息子と同じ高機能自閉症であるが、動物科学博士号を持ち、動物施設の設計士として活躍し、同時に自閉症関連の本を数冊書き、講演も行っている。彼女が子どもの頃、専門家は施設に入れることを勧めたが、母親が拒み、普通教育を受け続けられるよう、色々な努力をしたそうだ。そう、施設に入っていたら、今日のグラディンのキャリアは実現されなかっただろう。
この本の“私はオタク”という項で、グラディンは、以下のようなことを言っている。(多少、端折って一部要約)
―自閉症・アスペルガー症候群の人間は、しばしばオタクと同類で、理系オタクは、シリコンヴァレーで働き、才能を高く評価されるケースがある。人は社交的であることを求められ、世間の人は“人づきあいを人生の究極の目的”と考えるが、SNS、メールなど、人づきあいで使われる電子通信媒体は、ある程度自閉症の傾向がある人の手で作られている。「理系オタク」は、自分たちが生み出す新しいテクノロジーに熱中し、「社交中毒者」(なかなか嫌みな表現だな)は、最新テクノロジーを使って、人と付き合うことに熱中する。さらに「社会できちんとふるまえて、他人との付き合い以外でそれほど問題がなければ、子どもが本来持っている関心を尊重し、それを表現する方法をはぐくむべきだと思います。世の中の誰もかれもが社交的なわけではありません」ときっぱり言っている。
算数が好きで、レゴやピタゴラ・スイッチにはまり、去年からテクノロジー・クラブ(今のところ、木片で飛行機や船を作るレベルだが、そのうち電気のしくみなども習う)に熱心に通い、ゲームが大好きな息子は、理系オタクの素質アリだ。この際、友達作りは後回しで、目指せビル・ゲイツ、スティーブン・ジョブス(二人とも発達障害の疑い大)で、理系オタクの道を歩んでもらうのも、いいかも。


と勝手に夢を膨らませていたのだが、新学期になると、息子は「ラグビーをやりたい」と言い出す。え!ラグビーなんて、理系オタクの対極にあるものではないかえ?
ラグビーと言えば、中村雅俊が熱血先生を演じていた、青春ドラマ『われら青春』。仲間とスクラム組んで、勝利に向かって一緒に熱くなる、ってあんたにとって一番苦手な世界じゃないの?このドラマの挿入歌に、♪いちばん大事なものはなあに~? きまってい~るよ 友達さぁ~、なんてのがあって、友達がいないあんたには一番不向きなスポーツだよ、なんてことを、もちろん息子に向かって言えるわけがない。
どう考えても個人競技向きなんだけどなぁ、と思いつつも、本人がやりたいことをやらせてやろう、とコンフラン市のラグビー・クラブに登録する。フランスは残念ながら中学に日本の部活のようなものが存在しないので。

ひょっとして、有名ラガーが実は発達障害、なんてケースはないだろうかと、“ラグビー”、“自閉症”で、ググると、『一緒に見上げた空[自閉症児×元不登校児]武蔵野東ラグビー部の軌跡』という本が見つかる。武蔵野東学園は、自閉症児の募集枠があり、健常児との“混合教育”で知られる学校。アマゾンの解説によると、ジャーナリスト大元よしき氏によるこの本は“自閉症児と元不登校児たちがチームを組んで、ともにラグビーボールをつないでいく-。 武蔵野東技能高等専修学校ラグビー部の80人の部員と8人の顧問団が織りなす感動のノンフィクション”とある。さらにググって、ラグビー好きらしい、まゆはるさんとおっしゃる方の個人ブログでこの本を取り上げているのを発見。それによると、このチーム、東京都大会で準々決勝まで進んだらしい。まゆはるさんは、「ラグビーは身体の大小、足の速い遅い、それぞれにあったポジションがあるから誰でも出来るといわれる。誰しも役割を持ち、その役割を果たすために努力する。これが子どもたちに、いい影響を及ぼす。すばらしいことだ」とも書いていらっしゃる。
 なるほど、相撲部屋に入門した方がいいのでは、と思えるほどに太ってしまった息子(特にお腹周り・・)であるが、あの体型を活かし、チームの一員として役割を果たしている、という意識を持てるようになり、仲間とボールを投げ合うことがコミュニケーション能力の開発(コミュニケーションは言葉のキャッチボール、とも言うし)につながることをおおいに期待しよう。

次回、帰国時にこの本はぜひ、買わねば。

さて、ラグビーの練習場は、コンフラン市のはずれにあり、うちから車で片道15分近くかかるので、1時間半の練習時間、私はそこに残って、息子の様子を見ることに。クラスは年齢別なので、息子のクラスにはラグビー歴4年なんて子もいる。しかも、コーチの方針か、ランニングやパス練習などの基礎訓練はほとんどなく、実戦まがいのことばかりやっている。案の定、息子はボールをパスされても落とすし、もたもた走り、意味なくとび跳ねたり、ボールの上にみんなが重なり合っている時に、棒立ちでそれを眺めていたり(これが、息子のポジションの役割??)で、大丈夫だろうか、と心配になる。でも、ボールを追って走るのはダイエットにもなるだろうし、何より本人が、「楽しい」と言っているので、とりあえず、よしとしよう。
ラグビー始める




息子、特別支援クラスに体験入学をする

息子は来年度からいよいよ中学生。サイトで発達障害児を受け入れる特別クラスのある学校を探していると、パリの私立校が一つ見つかった(たった、一つ。探し方が悪いのか・・)ので、さっそく、メールを送ることに。<小学校最終学年にいる10歳の息子は、高機能自閉症と診断され、現在は教育アシスタントがついて、普通クラスに通っています。御校の特別クラスについて情報を送ってもらえますか?>とこれだけでは、芸がないので、<彼は算数が得意で、日仏バイリンガルです>と付け足して、送信する。
 
1週間ほど経っても何も返事がないので、直接その学校に赴くと、受付けで、「願書を取りに来たのですか、それとも出しに来たのですか?」と尋ねられたので、プリントアウトしたメールを見せて、「これを送ったけど、返事がありません」と言うと、すぐ担当者に電話をしてくれ、「特別クラスは、来年、空きがあるるかどうか分からないけど、キャンセル待ちリストに載せることもできるので、まずは願書を出して下さい」と言われる。心理士の診断書なども一緒に送った方がいいかと尋ねると、それは後からでいい、とのこと。なかなか応対が感じよかった。

願書には、余暇活動を記入するずいぶん広い欄があり、幸い、息子は、ダイエットもかねて、複数の習い事をしており、<水泳、マウンテンバイク、工作教室、ギター>と夫が記入。「日本語通信教育も付け足して」と私が言うと、「それは、余暇活動じゃないだろう」。ただ、何が引っ掛かるか分からないので(願書を目にした教師が親日家なんてこともあるかも、って就活じゃないけど)、「取りあえず、書いて」と頼む。
成績表は、総合評価をコピーして同封する。<授業に集中せず、課題をやらず、アシスタントがついていないと、鉛筆すら持たない。にも関わらず、テストは好成績でした>と、息子の問題を簡潔に説明している。息子は知的障害ではなく、情緒障害という分かりにくい障害を抱えているのだ。

まもなく、学校から電話があり、「1週間の体験入学に来ませんか?まずは息子さんにこのクラスがあうかどうか、見てみましょう」と、提案される。親切だ。しかも、給食は一般生徒と食べるが、体験入学なので払わなくていい、と言ってくれる、何て太っ腹な学校!

現在、息子の通っている小学校にて、一学期に一回、息子を囲んで、教育会議なるものが開かれ、担任、校長、療育センターのスタッフ、学校心理士、教育アシスタント、あと県の教育担当者なるお役人マダムが集まる(むろん、夫と私も参加)。そこで、さっそく特別クラスの話をしたところ、お役人マダムが、「そんなもの、必要ありません。成績も悪くないんだし、アシスタントの付く時間を増やすから、普通クラスに通えばいいでしょう」!今、現在、息子には週10時間、アシスタントが付いているが、中学になったらそれを20時間に増やすという。
息子はコミュニケーション障害があり、友達ができない。今は、週2回、療育センターに通い、グループ療育を受けているが、中学になると、心理士との一対一のカウンセリングのみになる。他の生徒たちと接することなく、アシスタントに付き添われて、授業だけ受ける、そんな学校生活が息子にとっていいのか?また、暗記や計算は得意であるが、論理的思考ができず、自分の考えを言葉できちんと表現できず、イマジネーション能力も劣っている息子が、中学の授業についていけるのだろうか?いじめの問題も深刻になるだろうし、息子は格好のいじめの対象になるのでは?
と、不安は尽きず、息子と接することのほとんどないお役人の意見に従うつもりもなく、第一、特別クラスが息子にあうかどうか、試してみなければ分からないし、せっかく学校側から体験入学を提案されたのだから、もちろん、行くことにした。
 
体験入学先はカトリック系の私立校で、Tシャツ禁止(ポロシャツはOK)、運動靴禁止である。1週間といっても水曜は休みなので、ポロシャツが4枚あることを確認し(ちょうど4枚しか持っていなかった。水曜に洗えばいいんだけど)、皮靴を買いに行く(さいわいバーゲン中)。体験入学だから大目に見てもらえるかもしれないが、靴のことでいじめられたら?なんて、ふと心配になる。

 学校までは電車と地下鉄を使い、ドアツードアで1時間ほど。初日は、夫も一緒に行き、先生方に挨拶をする。息子は不安がる様子もなく、すんなり先生の後について教室に入っていく。中学クラスと聞いていたが、高校生と思しき大きな子もいるし、ダウン症の子が二人ほどいたが、他の生徒たちは、見かけだけではどのような障害をもっているか分からない。
 初日なので、何かあったらすぐに迎えに行けるように、と学校の近くで映画を二本見る予定を立て、行きつけの美容院もすぐそばなので、予約を入れておいた。すると、夫も「今日は、午後の会議だけ出ればいいから、ルーブル美術館に行く。こんな朝早くからパリに来ることなんて滅多にないから」とうきうきしているので、ネクタイ締めてルーブルに行くのかよ、と嫌みの一つも言いたくなった。
 美容院が終わったのが下校時刻ぎりぎりで、慌てて迎え行くと、開口一番、息子は「楽しかった!」。本当に会議だけ出て、退社したらしい夫も迎えに来て、3人で近くのカフェに行って、ケーキを食べながら、息子に話を聞く。給食がおいしかったこと。特別クラスの男の子二人と一緒に給食を食べ、特別クラスに一人、日仏ハーフの子がいる、と教えてもらったこと。その後、休み時間は、他の生徒(普通クラスの)がサッカーやラグビーをしているのを特別クラスの子と一緒に見ていたこと、などなど。地元の小学校では、いつも一人で、「誰もオレと話をしてくれない」と言っている息子が、初日から、ちゃんと他の子と交わっている。障害がある者同士、波長が合うのかも。初めての皮靴が痛くて、足を引きずっていたが、まあ、これも慣れるだろう。

2日目は、朝の電車が混んでいて、席が空いておらず、パリまでずっと立つはめに。不機嫌になった息子の気を紛らわせようと、電車の中で、退屈しないように持って来た『かいけつゾロリのおやじギャグ200連発』を渡すと、「ママ、読んで」!満員電車の中で、「このイス、いいっすね」なんて、音読をさせられる。幸い周りはフランス人だけど。
学校に着くと息子は上機嫌で教室に入って行き、私は先生たちに息子が学校を気に入っている旨を伝えた。その後、近くのスタバに行って、企画書の下書きを一つ仕上げる(ノートパソコンを持ち歩くのは重いし面倒なので、レポート用紙に手書き)。それから、早めに和太鼓教室に行き、稽古の後は買い物をして、息子を迎えに行くと、昨日とはうって変わってしかめ面をしている。そして、帰り際、先生に向かって、「二度と来ません!」と叫ぶ。またまた、カフェに連れて行き、ケーキを食べさせながら(放課後のケーキを習慣化してはいけないと思いつつ、自分も甘いものが食べたくて)、何があったのかを問いただす。給食がまずかった、理科の授業がつまらなかった、他の子に叩かれた(!)という。「どうして叩かれたの?」と尋ねると、「オレがパリに住んでいないから」。「じゃ、先生に、その話をしてもいい?」。「今のはウソ」・・やっぱり。
 
水曜日は、いつもどおり地元の水泳教室と木工教室に行き、夕方に「明日も、パリの学校に行く?」と確認すると、不機嫌な顔ながらも、「行くよ!」。
木工教室
(木工教室で、糸のこ盤を使う息子)

木曜の朝は、息子が黙って教室に入って行った後、先生に「火曜の理科の授業がつまらなかったそうです」と話すと、「理科の授業なんてしていませんよ」。・・これもウソであったか。どうも大嫌いな作文の授業があって、それが不機嫌の理由だったようだ。映画を一本見た後、知人と待ち合わせて、ランチ。彼女は最近、引っ越したばかりで、その新居にお邪魔して、コーヒーをごちそうになり、おしゃべり。彼女には高校生の息子がいて、偶然にもうちの子の体験入学先に中学の時に願書を出し(普通クラスに)受かったのだが、校則が厳しく、髪型まで規制されることを知ったご主人が、他の中学に入れることを決めたのだという。もし、彼がここに通っていれば、学校の様子をもう少し詳しく知ることができたのに、・・残念。
夕方、迎えに行くと、機嫌の直ったらしい息子が、「今日の給食はおいしかった!」他には、算数の授業が図形で、難しかったという。

最終日は、夫が会社に行く前に息子を学校に送り届け、迎えは私が行くことに。その前に、日本の療育センターで働いた経験のある知人とカフェで待ち合わせ、『自閉症ガイドブック 学齢期編』を借り、近況報告を交えたおしゃべり。息子を迎えに行くと、この日は水泳の授業があったおかげで、たいへんご機嫌だった。地元の学校はプールがないので、バスで少し離れたところにあるプールまで行かなければならないが、ここは学校内にプールがあることが気に入ったらしい。算数の授業で数独をした、というので、驚いたら、1~4のみの子ども向けの数独だったという。そんなものがあるとは知らなかった。
先生からは、「何も問題なかったですよ」と言われ、3月中に、この1週間の評価をまとめ、連絡してくれるという。とりあえずは、無事に体験入学が終わったのでほっとする。

週末に、息子に体験入学について感想文を書くように言ったところ、4日間の給食メニューを羅列し、その後に「月曜と木曜はおいしかったけど、火曜と金曜はまずかったです。プールが楽しかったです。」と書き、最後に「この学校に行きたいです。」とまとめらしきものが。
その後、夫がフランス語で感想文を書かせたところ、何のことはない、全く同じこと(給食メニューの羅列とプールのこと)をフランス語で書き直しただけであった。

月曜からは、今までどおり、地元の学校に登校。朝、夫から「担任から体験入学のことを聞かれたら、給食以外の話もするんだぞ」と注意されていたが、結局は、担任は何も尋ねなかったという。クラスメイトに「病気か?」と聞かれたと言うので、「剣ちゃんが、病気で休んでいたと思ったのかな?」と尋ねると、「パリの学校まで行くなんて、病気か!って」・・確かに徒歩圏の学校に通っている子どもからみれば、毎日片道1時間近くかけて通学するなんて、正気の沙汰じゃない、と思われるか。

体験入学先からの連絡を待ちつつ、息子にとってどういう進路が一番いいのか、悩む日々。まあ、悩んでも結局は落ち着くところに落ち着くんだろうけど。

水曜日の水泳教室

息子は、毎週水曜日の午前中、水泳教室に通っている。フランスの公立小学校は水曜が休みなので、子どもの習いごとが集中し、水泳教室は、9月の新学期、登録日初日に申し込みに行ったにも関わらず、キャンセル待ちと言われた。しかし、幸いにもすぐ席が空き、第一回目から通うことができた。

 息子は赤ん坊の頃から水が大好きで、お風呂に入れるとご機嫌になり、海に連れて行けば波に向かってよちよち歩いて行き、一度水に入るとなかなか出ようとしなかった。1~2歳でベイビースイミングに通ったが、浮き棒につかまり一人で楽しくぱしゃぱしゃと浮いていたし、滑り台も怖がらなかった。
ところが、3歳で、水泳クラブに入ったとたん、プールのへりにしがみついて動かなくなった。もちろん、水が怖いのではなく、コーチの指示に従って他の子どもたちと一緒に何かをやる、ということができないのである。これは学校でも同じで、今でも県の障害者センターから派遣される教育アシスタントが、週10時間授業中に付き添ってくれる。そうしないと算数や理科などの好きな科目以外は、授業を無視して、絵を描いたり、漫画を読んだりしてしまう。その絵の出来が素晴らしければ、将来、画家として成功した時に、子どもの頃のエピソードとしてネタになるかも、なんて(親バカな)希望も持てるが、ひいき目に見ても上手いとは言えない。毎朝、息子を学校に送る時(フランスでは小学校までは送り迎えが義務)、門の前で、「ちゃんと先生の言うことを聞いて、みんなと同じことをするのよ」と呪文のように言い聞かせ、息子は判で押したように「分かってる!」と答えるが、一向に改善されない。分かっているけれどできない、ということか。
 
 さて、水泳教室であるが、登録したのは、泳げない子ども向けのクラスなので、小さい子ばかりだろうと思っていたら、一人、息子と同じくらいの背丈で、しかも同じようにお腹が出ている女の子がいたので、ほっとする。
 最初の頃はビート板につかまって、ひたすらバタ足をさせられた。息子は、足を一生懸命動かしているのに前に進まず(膝が曲がり気味)、他の子たちに追い越される。はがゆく思うが、この子にとっては、コーチの言うことを聞き、他の子たちと同じことをしているだけで、すごいことなのだ、と思い直す。
 そのうち、ビート板を持つ手を右、左と変えながら、大きく腕を回すクロールの練習が始まる。息子は他の子どもに比べて、コーチに注意される回数が多い。肘がちゃんと伸びていなかったり、息継ぎで顔を真正面に上げたりで、言われてもなかなか直らない。しかし、叱られても癇癪を起さず、続けている、それだけで、すごいのだ、と自分に言い聞かせながら、その様子を眺める、私・・。
 まもなく、ビート板なしで、コースロープに時々つかまりながらも、クロールで泳ぎ始め、1月には、フォームは決してきれいではないが、クロールで25メートル泳げるように。9月には全く泳げなかった息子が・・、こんな風に目に見えて上達するなんて、毎週、車で送り迎えした甲斐があった(って、片道5分だし、夫が代わりに行くこともあるけど)。来年、中学に進学する前に泳げるようになって、一安心である。
 
そして、先週、息子はバタ足だけの背泳ぎで、25メートルを泳ぎきった。何を隠そう、私はこれができないし、例のお腹の大きい女の子も、へりにつかまりながら、ようやく進んでいた。その前日、学童保育に迎えに行った時、私の顔を見るなり、息子は突然、泣き出して、頭を机にがんがんと打ち付けた。指導員の話によると、他の男の子にからかわれ、その子に手を出したところ、叩き返されたらしい。言葉によるコミュニケーションがうまくとれず、それがトラブルの原因になるのだが、自分の手で頭を叩いたり、何かに打ちつけたりする癖はしばらく収まっていたのになぁ、と、ず~んと落ち込んだ。でも、このバタ足背泳ぎを見て、何だかポジティブな気持ちになった。子どもには一喜一憂させられる。
 その後、飛び込みの練習が始まる前に、子どもたちが水に足をつけながら、プールサイドに座っていたのだが、息子が隣にいた、たぶん2歳くらい年下の男の子と何か話をしている。お、会話できてる!と喜んでいたら、突然、その子の背中を押し、プールの中に落としたので、青くなる。ところが、その子は、梯子を上って水から出て来て、何事もなかったかのごとく、また、息子の隣に座ったので、ほっと胸をなでおろす。本当に、一喜一憂・・。

ちなみに、来年度から、公立小学校のカリキュラム変更で、水曜日の午前中も授業が行われるようになるらしい。となると、習いごとは水曜午後に集中し、水泳教室もますます入りにくくなるだろうな。

水泳教室

息子のダイエット作戦

先月も書いたが、息子の肥満が目下、悩みの種である。
インターネット上で、“子どもの肥満度測定”なるものを試してみたところ、「肥満度7.6%で普通の体格」と出た。しかし、三段腹と二重あごは、どうひいき目にみても、“普通”ではなく、義理父をはじめ、日本の家族・親戚、友人からも「何とかしなさい」と言われた。確かに、肥満は健康にもよくないし(子どもの糖尿病も少なくないらしい)、また、うちの子の場合は、いじめの原因を増やすことになるし。
 と、今年は息子のダイエットに力を入れることにした。
ちなみに、私は、ダイエットと無縁の人生を送っている。好きなだけ食べているつもりだが、身長167センチで体重は今まで49キロを超えたことがない、妊娠・出産直後をのぞいては。なので、人がなぜ望まないのに太ってしまうのかが、正直、ピンとこない。
以前、急に太った友人に、「摂取したカロリー以上に消費すればいいだけじゃない」、と言ったら、「そんなことは、分かってるわよ!」と嫌な顔をされた。分かってるなら、実行すればいいと思うのだが、今なら、「じゃ、あんたの息子は何?」と言われても返す言葉がない。
息子はよく食べる。夕食のごはんは2回おかわりする。でも、この育ち盛りに、ごはんの量を減らすのは酷だ。と、なると、カロリーを消費するにはスポーツが一番。確かに、去年は水泳教室がキャンセル待ちのまま、1年が過ぎ、何もスポーツをしなかったのだ。
今年は、無事、9月から登録できて、毎週水曜日、午前9時からの初心者向けコースに通っている。息子は、休みの日(フランスの学校は水曜日が休み)早起きするのも苦にならない様子で、嬉々として通っている。

そして、もう一つ、療育センターから勧められ、アソシエーション・フォーラムでブースを覗きに行った、“野外&冒険”クラブのマウンテンバイク教室にも登録した。
土曜日の午前9時~12時半、たっぷり3時間半も自転車をこげば、かなりの運動量になりそうだ。
息子は自転車に乗りたがらず、2年前に買った自転車は、地下室でほこりをかぶっていたが、なぜか、“野外&冒険”クラブのパンフレットを見ていて、急に自転車に乗りたい、と言い出したのだ。
集合場所に息子を送り、戻って来た夫が、「僕の名前は剣です」ってちゃんと自己紹介していた、とうれしそうに報告する。出来の悪い子ほどかわいい、というのは、普通の子が当り前にできることをしただけで、親に大きな感動を与えてくれるから、か。

vtt.jpg

 12時半に夫と一緒に迎えに行くと、ちょうど、若いインストラクターの男性と他に息子より年上らしい男の子二人と自転車をこぎながら、戻ってくるところであった。
 インストラクターに「問題なく、ちゃんと運転していましたよ」と言われ、ほっとする。
後で息子に聞いたら、この日は近くの公園まで乗って行って、そこでバスケットボールをしたという。・・まあ、カロリー消化につながる運動をしてくれれば何でもいいのだが。実は2回ほど、自転車をこぎながら息子は転んだらしい。それでも、癇癪を起して「止める!」などと言い出さず、来週は近くの森か池(周りに自然がいっぱいあるのが郊外暮らしのメリット!)まで出かけるらしく、それを楽しみにしている様子。

 水泳と自転車で、来年の夏には息子の二重あごと三段腹が解消することを、おおいに期待する。

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プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター・コーディネーター。
96年に渡仏し、99年から10年間パリ発日本語情報誌『Bisouビズ』の編集長を務め、同時に日本の雑誌やWebに情報記事、コラムなどを寄稿。
2010年に日仏バイリンガルサイト『BisouJaponビズ・ジャポン』を立ち上げ、ジャパン・エキスポなどパリで行われる見本市で、日本企業や日本人クリエーターの出展をプロデュース、展示会の企画コーディネートの仕事を始める。
2018年に22年間のパリ滞在にピリオドを打ち、日本に帰国。

『BisouFranceビズ・フランス』
https://www.bisoufrance.com/

個人ブログ『湘南二宮時々パリ』
http://ninomiyaparis.blog.fc2.com/

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