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黒沢清の『岸辺の旅』を見に行く

短いブログ(私にしては)を一つ。

フランスでなぜか人気が高い黒沢清監督、その新作『岸辺の旅』(カイエ・ドュ・シネマが5つ星を付けていた)を息子と観に行く。

黒沢清といえば、学生の時に『神田川淫乱戦争』と『ドレミファ娘の血は騒ぐ』の二本立てを、池袋のポルノ映画上映館に観に行ったっけ。黒沢監督が立教大学の卒業生で、同大学で当時『映画評言論』の講義をしていた蓮見重彦氏が推奨したこともあり、立教の学生、特に女子学生(私も当時はそうだったわけで)が押し掛けたので、オジさま客たちが居心地の悪そうな顔をしていたような覚えが。私は、確か映画好きの男友達と一緒に観に行ったのだと思う。どんなに興味をそそられた映画でも、さすがに一人でポルノ映画館に観に行く勇気はなかっただろうし。で、作品を観た感想は、ああ、この監督、ゴダールが好きなんだな、程度だった。

それから10年以上経って、今度はパリで夫と一緒に観たのが、『CURE』で、その時は萩原聖人ってうまいな、対照的にうじきつよしはなんて演技がへたなんだろう、と思った記憶が。夫は「この映画をキミと結婚する前に観ていたら、日本人と結婚しようなんて絶対に思わなかっただろうな」とおバカな感想を言っていたっけ。

さらに15年以上経って観たのがこの『岸辺の旅』。息子の感想は一言「不安な映画だ。音楽も不安だ」であった。あとはベッドシーン(控えめで、全然過激ではなかったが)で、息子は「だましたな、普通の映画だと思っていたのに」と不機嫌そうに耳打ちしてきた。うーん、母親とこういうシーンを観るのは恥ずかしいという意識があるのか。
ちなみに、私はこの作品、けっこういい感じで、気に入った。
ただ、夫が実は幽霊であることに、妻は徐々に気づいて行く(そして観客も)、って設定にした方が面白かったんじゃないかな。まあ、原作があるみたいなので、何とも言えないけど。

そういえば、夫または彼が幽霊、って映画はあまり記憶にない。『オールウェイズ』(スピルバーグ、1989)、 『ゴースト ニューヨークの幻』(ジェリー・ザッカー、1990)くらいか。制作年が1年違いなのね、この2作。
さらに、幽霊のロードムービーって、心当たりがない。ってことは、『岸辺の旅』って、新ジャンルを開拓した斬新な作品と言えるかも。

vers lautre rive

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早川義夫の『たましいの場所』と鬱の会

元ジャックスの(と枕詞につけたら、本人は喜ばないかもしれないが)早川義夫のエッセイ集、『たましいの場所』。去年、帰国の際に買って、その時は、ただ、面白く読んだだけであったが、この8月に、嫌なことが立て続けに起きて、友達に「どん底だ~」と愚痴メッセージを送った後に、ふと、本棚に差してあったこの本が、目に入る。そういや、あとがきを読んでいないな、と、あとがきだけじゃなく、ぱらぱらと読み返してみたら、いやー、思わず涙まで出て、色々な言葉が心にずしんと響いた。その時の精神状態によって、言葉って落ちどころが違うよね。
あとがきに、文庫化を提案した筑摩書房の編集者が「この本は電車の中では読めませんね。 泣けちゃうから。」と語った、とある。この編集者も読んだのがつらい時期だったのか、いや、単に私より感受性の鋭い人なのかもしれない。

8月頭にまず、会社から解雇される。ただ、その話をすると、「よかったね~」、「望みがかなったね~」と色々な人から言われ、はて、こんなにもたくさんの人に、会社の悪口や愚痴を言っていたか、と気づく。そうか、ラッキーだったな、なんて思っていたのも束の間、その後、アンラッキーな出来事が、笑っちゃうほど続き・・、と言っても不運の規模(?)としては、今までの人生でしばしば遭遇した“ありがちな不運”だったが、それが、束になって襲い掛かって来た(ように感じた)ので、ずんずんと落ち込んでいき、引きこもりがちに。
 
 これではいかん、と久しぶりに人に会う約束もあり、その前に気分転換も兼ねて美容院に行ったら、お世話になっている美容師から、説教をくらう。
「愚痴を言っても何も解決しないでしょう?それに、いつも愚痴ばっかり言ってる人って思われちゃうわよ」。すでに思われているかと。
 彼女が親しくしている有名占い師のことを思い出し、診てもらおうかなぁ、と言うと、その場で電話を入れて、予約してくれる。パリ在住の中国人、日本語もぺらぺらの易学家で、フランスの有名政治家から日本の芸能人まで、幅広く顧客を持っている。
 診てもらうと、いきなり、「今、悪い時期だね」。やっぱり。「あなた、金運が0だね」。 “悪い”とかではなく、0なのね・・。「でも、健康運は悪くないから」。この歳になれば、健康の方が大事かも。金運もいいに越したことはないが。ただ、息子のことで、うれしいことを言われたので、気分が上向きになり、最後に「来年1月まで、出会い運はいいから、なるべく外に出て、人に会いなさい」とアドバイスされる。
 
 8月最後の日、歩いて10分の医者のところに、息子を健康診断のために連れて行く途中で、道でハデに転んだ(歩道上に敷いてあった鉄板が雨上がりで濡れていた)。これで、厄落としになれば、と思っていたのだが・・。息子は肥満を指摘され、気になって自分も体重を測ると、恐ろしいことに8月頭に比べ、2キロも増えていた、プチ鬱で食欲が落ち、眠れないにも関わらず(正しくは、寝付けてもすぐに目が覚める)。
 これではいかん、と剣道の稽古に行くも、ウォーミングアップ中にまずは、袴に足指を引っ掛けて転び、その後は回り稽古で、意地悪な先生に転ばされる。三転び四起き・・。

 9月は、易学家の言いつけを守り、毎日のように外出。ランチのお誘い、飲み会のお誘いは、全て受けて立ち、展示会のオープニング・パーティにもどんどん出かける。
 新学期で和太鼓教室も再開。久しぶりに会った、和太鼓仲間のNちゃんが、「連絡しようと思っていたの、私もHallelujahを繰り返し聞いてるのよ~、コトリンゴ版だけど」と、職場の人間関係のストレスで、鬱になり、精神科に通っているという。この曲、鬱を呼ぶのか、それとも鬱になると聞きたくなるのか・・。まあ、一緒にごはんを食べようよ、ということになり、そこに同じく和太鼓仲間で、万年鬱(鬱との共生を人生のテーマにしているそうだ)で、しかも近々、大手術を受ける予定のT子さんが加わり、稽古の帰りにスタジオ近くのタイ料理店で“鬱の会”を開くことに。和太鼓繋がりだから“打つの会”!なんちゃって・・。深刻な鬱病にかかっている人からは、太鼓叩いて、タイ料理食って、何が鬱じゃ~、とお叱りを受けるか?いやいや、本人たちは、至って深刻。で、ここから鬱の和が広がったりして・・。

さて、タイトルに戻って、『たましいの場所』は、泣けると同時に笑えるエッセイ集でもある。

「肩書」という章で、
<本当に頭のいい人は「俺は頭がいいから」とは、まさか言わない。本当に仕事の出来る人は「その仕事は俺がやった」などと自慢しない。人に認められていれば、自ら名乗ったり訴える必要はない。>
とあるのだが、辞めた会社に、自分自慢ばかりする人がいて、特に「自分の付き合っている人間は、レベルが高い」と繰り返し宣っていた(なんのレベルじゃ~?)、自信過剰なヤツと思って見ていたが、仕事で関わりあった、批評眼鋭い私の友人が、「あれは、自信のなさの裏返しよ」と言ったので、そんなものか、と驚いたことがあったのだ。
で、早川義夫は、
<神様は、自分のことを「私は神様です」とは、たぶんおっしゃらない。>
と例えている。ね、ちょっぴり、笑える。



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プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター・コーディネーター。
96年に渡仏し、99年から10年間パリ発日本語情報誌『Bisouビズ』の編集長を務め、同時に日本の雑誌やWebに情報記事、コラムなどを寄稿。
2010年に日仏バイリンガルサイト『BisouJaponビズ・ジャポン』を立ち上げ、ジャパン・エキスポなどパリで行われる見本市で、日本企業や日本人クリエーターの出展をプロデュース、展示会の企画コーディネートの仕事を始める。
2018年に22年間のパリ滞在にピリオドを打ち、日本に帰国。

『BisouFranceビズ・フランス』
https://www.bisoufrance.com/

個人ブログ『湘南二宮時々パリ』
http://ninomiyaparis.blog.fc2.com/

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