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発達障害の息子の夏休み

発達障害の9歳の息子は、公立の小学校に通いながら、市内にある医学心理センターで、週3回の療育を受けているが、7月初旬に、センター主催のノルマンディ5日間の旅行に、親の付き添いなしで出かけた。宿泊施設に泊まりながら、モン・サン・ミッシェルや水族館に出かけたり、農場見学をしたり、海で水遊びをしたり、という楽しそうなプログラムで、子ども7人に対して大人のスタッフ5人が付き添う、という手厚さである。しかも参加費はタダ!お小遣いを20ユーロほど、持たせて下さい、と言われただけ。常日頃、フランス人の夫は税金が高い、と文句を言っているが、その分、福祉政策は充実しているのではないかと思う、他のヨーロッパ諸国と比べたことはないが、少なくとも日本よりは。

 出発当日、夫と二人で息子をセンターまで送っていく。学校では孤立していて、友達がいない息子も、療育を一緒に受けている子どもたちとは何とか接しているようだ。おもちゃ箱を一緒にかき回しながら、息子が「すごくかっこいい、車輪を見つけたぞ」と言うと、他の子に「車輪なんて、どうでもいいぜ!」なんて一蹴されていたが、息子なりに、コミュニケーションをとろうとしていることが分かる。
 ミニバスに乗り込んでからも、隣の子が開いているマンガ本を横から覗き、何やら話しかけている。バスが動き出すと、一瞬、私たちに手を振ったが、すぐにマンガの方に目が戻っていった。・・まあ、行きたくない、と泣き出すよりずっといいか。息子はこの旅行をずっと前から楽しみにしていた様子で、日頃から息子と接していて、発達障害児の何たるかを心得ているスタッフが付いているので、私たちもあまり心配もせず、送り出す。もちろん、何かあれば、すぐ連絡をくれることになっているし。
 旅行4日目に、一度、こちらから宿泊施設に電話を入れてみると、すぐに息子に代わってくれて、「水族館で、7.3ユーロのペンギンの人形と、2.6ユーロの海賊船を買って、オレが10ユーロ出したら、お姉さんが、10サンチームくれた」と数字フェチな息子ならではの報告を聞かされた。

 さて、息子は、ノルマンディから戻った日に、今度は夫と二人で、車で南仏のラヴァンドゥに出かけた。私は、仕事やもろもろの雑務で、10日遅れで合流することになっていたが、ノルマンディにいた期間を合わせて半月も、日本語に全く触れず、忘れたらどうしよう、と不安になり、一人でできる漢字ドリルを旅行鞄に入れ、必ず一日1ページずつやらせるように、と夫に頼み(たぶん、守らないだろう、と思いながらも)、毎晩、電話もかけた。息子が話すことは、「○○を食べた」、「今日も海で泳いだ」くらいだったが。
 10日後に合流すると、息子はうれしそうに自作の日本語の紙芝居を見せてくれた。また、「(ベネッセの通信教育の)テキストは一回もやらなかったから、遅れてる」と申し訳なさそうな顔で言ったので、「ママと毎日2日分やろうね!」と、私はさっそく日本語教育ママになる。夏を制す者は日本語を制す、なのだ。

転勤で、去年から南仏のドラギニョンに住む、夫の弟家族が一度、遊びにやって来た。息子と同じ年の女の子と3つ年上の男の子がいて、お兄ちゃんの方が同じ年の友達を一人連れて来た。
従兄妹たちは、二人とも優しい子なのだが、今回は、他の子どももいるし、息子を相手にしてくれるだろうか、と心配になる。幸いなことに、男の子たちは二人とも、『ONE PIECE』と『NARUTO』が好きで、息子は、『ONE PIECE』オタクなので、「○○が初めて登場するのは第何話だ?」なんてクイズを得意げに出し続け、その物知りぶり(オタクぶり)を驚かれ、本人、得意げであった。夫も、うれしそうに翌日、義母に電話し、「剣が他の子どもとあんなに長く話しているのは初めて見た」と報告していた。まあ、話すというよりは、一方的に質問を出して、「正解!」とか「間違い!答えは○○」とか言っているだけなのだが。
ちなみに息子は『ONE PIECE』のDVDは日本語ヴァージョンで、TV放映版アニメはもちろんフランス語で観ていて、単行本は日本語で読んでいるが、もちろん、質問は全てフランス語で、固有名詞もフランス語のアクセントで発音していた。どうやらうまく日仏語の切り替えができているようだ。

11年夏


障害は一生、治らない。ただ、今後2年間(小学校在学中)、療育を続け、この障害の特性ともいえる、こだわり(マニアックな傾向)と画像や数字をキーワードにした優れた記憶力と、さらに息子の場合は、日仏語バイリンガル能力をいかせるような職業を見つければ、自立できるのではないか?そして、息子と同じことに興味をもつ、オタッキーな友達でもできれば、それで十分幸せな人生を送れるかもしれない。
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fan です

こんにちは 初めてコメントします。実は江草さんの影のファンなんです!
朝隈さんのパリ市内での個展に偶然通りかかり、私好みの作品に心打たれミニチュア3点を購入しました。
その際に対応された方が江草さんだと言う事が、暫く読んでいなかったブログで知り、客としてではなく、一ファンとし話せなかったのが残念です。
いつかまた偶然にお会いできたら(お顔拝見しましたから)握手してください!

No title

ねこさん、こんにちは。

まあ、ファンだなんてうれしい・・。

朝隈作品は、味があっていいですよね、私も今、仕事机の横に飾っています。
お買い上げ、ありがとうございました。

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プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター・コーディネーター。
96年に渡仏し、99年から10年間パリ発日本語情報誌『Bisouビズ』の編集長を務め、同時に日本の雑誌やWebに情報記事、コラムなどを寄稿。
2010年に日仏バイリンガルサイト『BisouJaponビズ・ジャポン』を立ち上げ、ジャパン・エキスポなどパリで行われる見本市で、日本企業や日本人クリエーターの出展をプロデュース、展示会の企画コーディネートの仕事を始める。
2018年に22年間のパリ滞在にピリオドを打ち、日本に帰国。

『BisouFranceビズ・フランス』
https://www.bisoufrance.com/

個人ブログ『湘南二宮時々パリ』
http://ninomiyaparis.blog.fc2.com/

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