“ありのままの自分”って?

 先週の土曜日に、パリのシテユニヴェルシテの日本館で入江富美子監督のドキュメンタリー映画『1/4の奇跡~本当のことだから~』(一人でも多くの人に観てもらいたい作品です!)の自主上映会が行われた。実は私もこのフランス上映実行委員会のメンバー。どんないきさつでメンバーになったか忘れたし、たいしてお役にはたてなかったが(BisouJaponの特集ページで監督インタビューをして、後はフライヤーを配ったくらい。あ、懇親タイム用にケーキも焼いたぞ)。
 
映画は、特別支援学校教論の山本加津子さんを追ったもので、難病や障害をかかえる人をありのままに受け止める山本さんの姿に、多くの人が感動し、日本国内で1000回以上も自主上映された。この「ありのままのあなたでいいのです!」というメッセージが、私のような障害のある子どもをもつ人間に限らず、普通の人たち(この“普通”ってやつの定義が実に難しいので、まあ、仮に健常な人、および家族も大方健常な人としておきましょうか)の心にも響くらしい。確かに、障害がなくても、人は誰でも、欠点、コンプレックス、悩みを持っていて、そんな自分を否定しなくてもいい、“ありのままの自分”でいいのだ!(バカボンパパの「これでいいのだ!」調)と、思わせてくれる作品なのだ。

ところで、“ありのままの自分”って何だろう?
“ありのままの自分”でOKだとすると、恋人がほしい!と思ったら、「ありのままの自分を好きになってくれる人が現われるまで待つわ!(わたし、ま~つ~わ、いつまでもま~つ~わ、とあみん調)」が正しい態度になるのか?方や、ファッション誌で“モテ服”や“モテ顔”を研究したり、いい女になるための自己啓発本を読んだり、と自分磨きに励む行動は正しくないの??つまり、三原順の『はみだしっこ』11巻のグレアムの言うところの、そんな自分が認められたとしてもそれは「技術と努力への評価」に過ぎない=そんな自分に恋人ができたとしても、相手は“ありのままの自分”を好きになったのではない、ということになるの???その前のロナルドのセリフは「誰が努力せずに目指す所へたどり着けるんだ?」で、今のままの自分ではいけない、と気付き、こうありたい自分をイメージして、それに近づく努力をする、それが人間の成長ではないかと・・。確かに、「あんた、そのままじゃ、一生、恋人なんかできないわよん」と言ってやりたくなる人もいるしなぁ。偽りの自分に恋をされるよりは、ありのままの自分のまま一人でいた方が幸せ、と誰もが納得できるものなのかい?いや、そもそも“このままではいけない、変わらなきゃ!”と努力する自分もまた、“ありのままの自分”なのか?
分からん・・・。

入江監督自身は、ある日、自分の欠けている部分を埋める作業をやめ、ありのままの自分を受け入れて生きようと決めた時に、感謝の気持ちがあふれだし、映画を作る決心をしたのだという。決心というよりは、ミッション、大いなるものからの使命として。つまり、自己肯定から、大いなるものに奉仕することになったそうだ。
 つい最近、パリのBOOKOFFで、高橋和己のエッセイ集を見つけ、思わず買ってしまった(若い頃好きだったので)が、彼の絶筆となったエッセイには、芸術家は自己否定(エゴイズムやもろもろの執着にわざわいされている矮小な個我を否定)することによってこの世を超える何者かへ奉仕する、とある。
 自己肯定と自己否定、見事に逆じゃん。
 
 大いなるものからの使命を受けた人は別次元として、我々凡人がやることは、“ありのままの自分”とは何か?を問うこと。まずは自己をなるべく客観的に見ようと努める(これが難しいんだな)。その上で自分のここはちょっと努力して直した方がいいな、とか、これは今更変えられないや、なんて考えながら生きて行く・・、って要するに、多くの人がすでにやっていることではないの?となると、むしろ人間は“ありのままの自分でしか生きられない、(の後に「これでいいのだ」、とバカボンパパの決め台詞を付け足すと、ポジティブな感じになります)”、と言ってもらった方が、自分としてはしっくりするんだけど。

入江監督
(入江監督、パリで講演)


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コメント、ありがとうございます。

こんにちは。
このサイト、しばらくチェックしていなかったので、連絡が遅くなってすみません。
ひょっとして拙著を読んでくださったのですか?
で、今パリ?やだ、うれしい、お会いできないかしら?
よければ、メールください。
yukaegusahesry@gmail.com


> 江草 由香さんて今日はじめてしりました!
>
> はじめまして。浅田と申します。
>
> あたしの去年32歳で勉強しにParis行こうと思ってました!(29歳の時に初めていって、住みたい!と思ったんです)でも、33歳になってしまいました・・・。が、久しぶりに旅行で11/6-1週間くらいいきます!!(一緒に行く方が整形外科医で、フランスが主催の学会がParisで1週間あり、同行することになったので)由香さんの『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』にビリビリきたので、言わずにはいられなかったんです!


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江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター。立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。PRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発情報誌『ビズ』を創刊。現在、日本の雑誌やWebにフランスの情報記事、コラムなどを寄稿しながら、日仏バイリンガルサイト『ビズ・ジャポン』の編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。

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