天気のいい日曜、デモの写真を撮って、映画『希望の国』を見る 

パイプ・オルガニストでライターの夏樹さんから、園子音監督の『希望の国』を見に行こう、とお誘いを受けた。映画は一人で見に行く主義だけど(息子とアニメ映画を見る時以外は)、メールに「一人で、映画館で泣くのが嫌なので一緒に行きません?」とあり、たまには誰かと一緒に映画を見て、その余韻が残るうちに感想を語り合うのもいいかな、と、すぐに、「喜んで!」と返事をする。
 ちょうど、ゲイの結婚を認める法案について記事を書くつもりだったので、反対派のデモが予定されている日曜日に、デモの写真を撮ってから映画を見に行くことに。その日は天気予報で、めずらしく晴れの予想で、夏樹さんとはその前に会った時に、天気がよくなったら、外でランチしましょう(ピクニックではなく、テラス席で、の意味)と約束していたのだ。
デモは、保守派デモの集合場所として知られるアンヴァリッド前のヴォーバン広場に15時集合とあったので、地下鉄エコル・ミリテール駅前で待ち合わせをし、カフェが並ぶクレール通りのビストロに。天気がいいので、テラス席はほぼ満員。フランスのカフェやビストロはテラス席のみ喫煙OKなのだが、運悪く、左隣に座っていた老ムッシューが匂いの強い葉巻を吸い、右隣りのル・モンド紙を開いているムッシュー(ル・モンド読者って必ず周りの人にLe Mondeのロゴが見えるように、新聞を広げて立てて持って読むんだよね)もタバコを吸っていた。テラス席も、喫煙コーナーと禁煙コーナーを分けてほしい・・。

ゆっくりランチして、15時にデモの集合場所に向かう。主催団体は、同性愛結婚に反対しているManif pour tout (“全ての人のためのデモ”の意)という団体。同性愛者の結婚は、Marriage pour tout(全ての人のための結婚)と称されるので、実に紛らわしい、というかわざとこんな名前をつけたのだろうけど。
美しいアンヴァリッドのドームが見える広場にたくさんのデモ参加者が集まっている。しかし・・、芝生の上に寝そべり、日焼け止めクリームを塗りあったりして(日差しが強かったので)、デモをするという雰囲気ではない。街宣車ならぬ白いトラックの上にDJが現われ、ビートのきいた何やら明るい音楽が青空の元に鳴り始め、リズムに合わせてデモ参加者たちが旗を振り始める。高校生と思しき若者のグループがいて、女の子が赤ん坊の人形を背負っている。まあ、この団体は古典的家族=パパとママと子どもで構成される家族を守ろう、と主張しているので・・、でも、その隣にはなぜかパンダのぬいぐるみを背負っている男の子がいたりする・・。
そういえば、TVニュースで、あれは反対派のデモだったと思うが、インタビューを受けていた若者の参加者が、「みんなでSMSで呼びかけあって、集まって、一緒にデモをして、素晴らしい体験だ!」と主義主張よりも、初めてデモに参加した喜びを興奮した様子で語っていたっけ。示威行動というよりは、お祭りに参加する感覚なのか・・。
 夏樹さんのだんな様もデモ好き(?)で、3年前に事故で大ケガをされたが、回復してまもなく、「デモに行きたい」と仰って、杖をつきながらデモに参加され、当然、夏樹さんも付き添い参加(?)したそうだ。

デモ

写真を数枚撮って、カルチエ・ラタンの映画館に向かい、『希望の国』を観る。震災後に被災地に行ってロケしたらしく、その意気込みは素晴らしいし、テーマもいいんだけど、うーん、芸のない無駄な台詞が多い気が。最後の心中シーンは、「死のうか」、「死のう」ってべたな台詞で、テンションが下がる感じ。北野武の『HANA-BI』の素晴らしいラストシーンと比べると、ね。主人公の若い男の振る舞いにも疑問が。大の日本男子が、父親に抱きついたり、「親父が好きだ」なんて言うか?「2,3日で戻って来るよ」と無理に笑顔を作り、父親と別れた後、ハンドル持つ手が悲しみで震えていた、ってな演出をしてほしいな。フランス男なら、「パパ、ジュテーム」って言っても違和感ないけど。監督は海外公開を意識して、あんな欧米人くさい演技をさせたのかも、と夏樹さんと意見が合う。
泣ける映画だと思って、マスカラをつけず(最近、つけはじめた)に行ったのだが、涙の一滴も出ず。

 映画はちょっと残念だったけど、天気がよく、テラス席で楽しくおしゃべりしながらランチして、デモの写真も撮れたし、楽しい日曜日であった。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

主演の夏八木勲さんの遺作?でしょうか。(この記事を見る2,3日前に亡くなりました)あれだけの震災と事故の現実の姿を超える映画ってつくるの難しいのかもしれないですね。ナチュラル派の江草さんがマスカラというのに驚きです。でも似合ってそうです♪

知らなかった

え~、夏山木さん、亡くなったんですか?知らなかった。マスカラは10年くらい前に一度挑戦して、すぐにパンダになるので止めたんだけど、最近、また始めました。この10年でマスカラも進化したのか、パンダになりにくくなったし。

おすすめ情報

おすすめ情報

プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター。立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。PRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発情報誌『ビズ』を創刊。現在、日本の雑誌やWebにフランスの情報記事、コラムなどを寄稿しながら、日仏バイリンガルサイト『ビズ・ジャポン』の編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。

最新記事
カテゴリ
ヴぉわいやーじゅ
おてる
ヴぉわちゅーる
あしゅらんす
うぃふぃ
レストラン予約
ふらんせ
あまぞん
せっと おーんず
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード