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映画が“分かる”ということ

フランスで、宮崎駿監督の『風立ちぬ』が公開中だ。外国の(フランスにとっての)アニメーション映画は吹き替え版が多いが、この作品は、字幕付きオリジナル版を上映する映画館が多い。大人向けの作品と捉えられたからだと思う。日本人ママの中にも、子どもには難しい、特に時代背景を知らないと分かりにくいのでは?なんて声もあがっていた。確かに『千と千尋の神隠し』や『崖の上のポニョ』に比べれば、ね。
しかし、映画なんてものは、子どもがその時点で持ち合わせている知性と感性で分かる部分だけ分かればよろしい、というのが私の持論。
残酷なシーンや過激な濡れ場などがなければ、本人が興味を持った映画をどんどん見せていいと思う。分からない=つまらないとも限らないし。

それは、子どもに限らず、大人にも当てはまることで、簡単な例を挙げれば、一体、誰が、J・L・ゴダールの映画を“分かる”のだろう?あの夥しい引用の元を全て知っているほど博学で、あるのかないのか分からないような筋を追うことができる人とは??
昔、東京でフランス語学校に通っていた頃、当時封切りされていたJ・L・Gの『右側に気をつけろ』を見たクラスメートが、「なんだか、全然分からない映画だった。ドストエフスキーの『白痴』を読んでいたら少しは分かったかなぁ」とつぶやいたので、私が「『白痴』は読んだけど、映画はよく分からなかったよ」と言うと、ほっとしたような顔をした。そして、分からなかったけど、つまらないとは思わなかった、と結論していた。そう、例え、ストーリーや作者の言わんとしていることがよく分からなくても、印象的なシーンや笑える(または泣ける)シーンがあったりして、分からないながらも「この監督の他の作品をもっと見たくなった」なんて思えたら、それだけで、その映画を見た価値は十分あるのではないか?
思えば、私が19歳でJ・L・Gの『パッション』を見た時は、J・L・Gの名前もヌーベルヴァーグというムーブメントの存在も知らない、無知ぶりであった。神奈川県の田舎の高校を出たばかりで、たまたま高校の同級生に「東京に六本木っていうおしゃれな街があって、そこに新しく映画館ができたらしいから見に行くべ~」と誘われたのだ。アマンドの存在も知らず、待ち合わせに苦労した後(もちろん携帯電話もない時代で)、六本木シネヴィヴァンで『パッション』を見て、何だかよく分からなかったにも関わらず、映画ってこんなに自由自在なものなんだ~、と感激し、パンフレットに解説(というか対談)を載せていた、映画評論家が自分の通っていた大学でも週1回、『映画表現論』なる講義をしていることを知り、さっそく翌年に登録し、名画座にもせっせと通い始め、挙句の果てには、パリの大学まで映画を学びに来ることになった。つまり、あの“何だかよく分からなかった”映画のおかげで私は今、フランスに住んでいるのであり、分からない映画は何ももたらさないということではないのだ。まあ、フランスに住んでいることが私にとって“良い”もたらしであったかどうかは、いまだ判断つきかねるが。

さて、同年代の子どもより理解力が低く、表現力も拙い我が11歳の息子であるが、『風立ちぬ』を最後まで退屈せず、大人しく席に座って鑑賞し、自分なりの感想を持った。「カプローニさんが、飛行機が落ちるところを撮ったフィルムを怒って水の中に捨てたのがおかしかった。それから、菜穂子が血を吐いてかわいそうだった」。
そう、何も小難しい感想など言えなくていい。(バカボンパパの口調で)これでいいのだ。


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No title

「映画表現論』懐かしいですね。
『ゴダールのマリア』っていうのを江草さんと同じような時期にバウスで観た記憶がありますが、やっぱりよくわからなかった(苦笑)内容もよく覚えていないけど、凄くテンポが速くってコラージュ写真のようだった・・?単館の映画館が更にどんどんなくなっていて、吉祥寺バウスシアターも閉館に。ずいぶん前から普通の映画館と変わらないような作品も(多分仕方なく)上映していたから、経営が大変だったのでしょう。『風立ちぬ』を息子さんと一緒に、っていうところがとてもウラヤマシイです。

なつかしい

バウスシアター、懐かしい。あそこで初めて見た作品はタルコフスキーの『惑星ソラリス』だった記憶が。『ゴダールのマリア』って、ミエヴィルが第一部をとっていて、そっちの方が好きだった気がする。しかし、閉館って、さびしいわね。映画おたくみたいな人たちが減ってるのかしら?ちなみに昨日は息子と『レゴ・ムービー』を見に行き、なかなか苦痛な作品でした、こういうときに限って眠れないし(私は映画館でよく寝ます)。

No title

「ゴタールのマリア」観てましたか。さすが!
THE LAST BAUS さよならバウスシアター 最後の宴 4月26日~6月10日 です。私がバウスで観て記憶に残っている作品はディバインの「ピンク・フラミンゴ」←ゲっ!(笑) 「ジャニス」←ジョプリンのやつです。もし春にご来日なら寄れますよ。関係ないけどデヴァインてマツコ・デラックスによく似てます。

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プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター・コーディネーター。
96年に渡仏し、99年から10年間パリ発日本語情報誌『Bisouビズ』の編集長を務め、同時に日本の雑誌やWebに情報記事、コラムなどを寄稿。
2010年に日仏バイリンガルサイト『BisouJaponビズ・ジャポン』を立ち上げ、ジャパン・エキスポなどパリで行われる見本市で、日本企業や日本人クリエーターの出展をプロデュース、展示会の企画コーディネートの仕事を始める。
2018年に22年間のパリ滞在にピリオドを打ち、日本に帰国。

『BisouFranceビズ・フランス』
https://www.bisoufrance.com/

個人ブログ『湘南二宮時々パリ』
http://ninomiyaparis.blog.fc2.com/

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