すごかったな、グザヴィエ・ドラン監督の“Mommy”

いや、すごい映画を観ちゃったよ。
ここのところあまりにも仕事が忙しい上に(ありがたい話だ)、ボランティア活動もばたばたして、おまけに風邪が長引いて、ブログネタもいくつか頭の中にあるのに、書く時間がなかったけど、これは書かずにはいられない。すごい映画です、カナダ人監督グザヴィエ・ドランの“Mommy”。カイエ・デュ・シネマまで5つ星を付けていたし。ダルデンヌ兄弟監督の“Deux jours, une nuit”を抜いて、今年のマイ・ベスト1だな、今のところ。

 夫亡き後、自閉症スペクトラムと思われる、感情コントロールのきかない15歳の息子に、一人でどう対処していいか分からず、苦しむ母親の話であるが、“母・息子モノ”のベスト1だ。と書いたところで、はたと気付くが、母と息子を描いた映画で印象深いものってあまり思い浮かばない。小津安二郎の『一人息子』、ベルトリッチの『ルナ』、最近では、アン・フレッチャーの『人生はノーリターン』(飛行機の中で観た)・・『楢山節考』は観てないけど、究極の母・息子モノなんだろうなぁ。ただ、この“Mommy”は、母&息子に元教師で、失語症に苦しむ隣人女性が加わることで、見事な三角関係(ドラマの基本)が出来上がっているので、単純に“母・息子モノ”とも言い難いか。

さて、“Mommy”であるが、役者陣が素晴らしく、息子スティーブ役の17歳、アントワーヌ・オリヴィエ・ピロンが秀逸。テレラマ誌では、母親役のアンヌ・ドルヴァルと隣人役スザンヌ・クレマンをカサヴェテス映画のジーナ・ローランズに例えていたが、私はむしろ、このピロンくんが、ジーナ・ローランズ×山Pのイメージなんだよね。(って、どんな役者だ?顔だけで言えば山Pの方が美形なんだけど)。略歴を見ると、13歳で、ジミ・ヘンドリックスのファンのカナダ人少年役でデビューとある。うーん、『依頼人』で12歳の時にデビューして、25才で急逝した天才子役(っていうかティーンだけど)ブラッド・レンフロは、『依頼人』と『マイ・フレンド・フォーエバー』で、ジミー・ペイジのファンという設定(実際にファンだったらしいが)だったなぁ、と不吉な連想。
役者3人とも、緊張感あふれる演技が素晴らしく、途中、何度涙が出たことか・・。
音楽もナイスだったし、また、画面サイズがちょっと面白くて、最初、おや?と思うが、途中で、なるほどそういうことか、と、まあ、これは観てのお楽しみ。

監督グザヴィエ・ドランは、弱冠25歳で、すでにこの作品が5作目だって。なんで、今まで知らなかったんだろう、この素晴らしい才能の持ち主に。と、いかに最近の自分が映画を観ていないか、映画に関する情報収集を怠っているかが、よく分かる。作風がウッディ・アレンに似ているという声があるみたいだけど、失礼な!(個人的にウッディ・アレン嫌い)同じニューヨーク派でも、ジョン・カサヴェテス(個人的に大好き)だろう、どう考えたって。
しかし、25才でこんな映画撮っちゃうなんて、早死にしないことを願うばかり。

ちなみに“Mommy”は上映時間138分。最近、歳のせいか2時間を超える映画は長いと感じてしまう。ジャック・リヴェットの12時間40分の超長尺映画『アウト・ワン』を列に並んで待って、観たのが懐かしい青春(って30歳を過ぎていたけどさ)の思い出。もちろん、面白い作品なら、見始めてしまえば、2~3時間はあっという間なんだけど、特に忙しい時は、尺が長いと映画館に行くのがためらわれてしまう。しかも、最近、パリでは、面白そうな映画がたくさん上映されているのだが、なぜかみんな、2時間超。ワイズマンの『ナショナル・ギャラリー』は173分、カンヌで脚本賞を取ったアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の『リヴァイアサン』が140分、同じくパルム・ドールをとったニュリ・ビルゲ ・ジェイラン監督の『Winter sleep』に至っては196分。

J・L・ゴダールが映画は1時間30分が適度な長さ、とか何とか言っていなかったっけ?確かに彼は、90分前後の作品が多い。ちなみに『気狂いピエロ』は110分あるけど。一番短いのはフレディ・ビュアシュへの手紙』12分かな。

と話は逸れまくり、どこがすごいの?説明不足じゃん、と言われそうだけど、とにかく観てくださいね、“Mommy”。

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No title

この監督、日本でも現在絶賛されているようです。私は、『わたしはロランス』をdvdで数か月前に観ました。若いのに、とても力量のある監督だなぁと思いました。力量ありすぎて、息苦しさすら感じました。
女装中年男と恋人の葛藤の話し、と書いたら身も蓋もないですが、最後まで長さを感じさせなかったです。
でもひとつ残念だったのが、ラスト。あれだけの葛藤乗り越えてきたのに、結局愛する人のためには、そういう結論に達したんだー・・という。
なんかせっかくなので、主役の女装の人には貫き通してもらいたかったなぁ、というのが個人的な感想。

No title

みわちゃん、そうなの、じつは日本にはドラン会なるものがあって、いきなり私のツィッターに反応してきたという。http://twipla.jp/events/116253

日本ではフランス映画の上映本数が減っていると聞いているけど(あ、彼はカナダ人だけど)、少なからず、いい映画を見る目を持った人たちがいるんだなぁ、とうれしくなります。

ちなみにMommyは日本では4月に上映だそうです。ぜひぜひ、観に行ってください。テンション高い映画なので、精神状態が安定している時に。あ、これ観て、活を入れる、という方法もありますが。

過去作は一つも観ていないので、これから遡ろうかと。

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mommyのスティーブは、自閉症スペクトラムではなく、ADHDです。正確な記事をお願いします。

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江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター。立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。PRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発情報誌『ビズ』を創刊。現在、日本の雑誌やWebにフランスの情報記事、コラムなどを寄稿しながら、日仏バイリンガルサイト『ビズ・ジャポン』の編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。

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