フランス南西部ドルドーニュ地方への旅

秋休みの2週目、フランス南西部ドルドーニュ地方に、家族旅行をした。
最近、ますます引き込りがちな息子を、何とか外に出さねば、と思案(ってほどでもないが)し、ドルドーニュにでも行くか、と夫が言い出したのであった。

この夏、日本に帰った時に、「大きくなったら何になりたいの?」と尋ねられ、息子はまじめな顔で「オレ、ニートになりたい」と宣った。心優しい私の友人は「ニートなんて日本語(か?)を知ってるのね、すごいわね。」なんて感心してみせてくれたが。息子から建築家や宇宙飛行士なんて答えは、期待すべくもないが、“ニート”はいくらなんでも・・。
案の定、旅行に出ることも喜ばず、黙って、リュックに『妖怪ウォッチ』のコミック1~7巻と『テストの珍解答 傑作選』を詰め込む。ミニカーを一台もリュックに入れなかったのは、この子なりに成長しているのかもしれない、とも思う。

ドルドーニュの紅葉Dscn0490


ドルドーニュといえば、美しい渓谷の風景、百年戦争でイギリス軍とフランス軍が争った土地なので、お城もロワール地方のように優雅なものではなく、城砦タイプが多そう。そして、フォワグラの産地・・程度のことしか知らず、ドルドーニュ川と聞けば、カヌーが思い浮かぶので、夏の行楽地という印象があるけど、秋は観光客が少なくて、いいかもしれない。 

出発当日に私は風邪をひき、熱が出る。前日、パリは寒く、また、例のストレスフルな会社の退社に必要な最後の書類にサインをしたばかりで、ほっとしたのか?
ドルドーニュのヴェリニヤック村で貸別荘を予約し、そこまで我が家から車で、途中昼ごはん休憩を入れて、7時間ほどかかったが、道中半分くらいは、眠っていた。これでけっこう回復したかも。で、ふと目を覚ましたら、眼前に、涙が出るほどに美しい紅葉が広がっていた!
夫は「日本の秋のように美しい」。私「はれ?あんた、日本に秋に行ったことあったっけ?」夫「いや、一度もない」・・この知ったような口の利き方が、いかにもフランス人である。
出迎えてくれた、貸別荘のオーナーの女性も「秋が一番美しい季節ですよ。毎年、秋に写真撮影に来るリピーターのお客もいます」と。そうか、いい時に来たのかもしれない。

ドル貸別荘
(寝室2部屋の貸別荘)


到着が土曜の夕方で、日曜から6日間、毎日、観光スポットを車で回ったが、わりと天気にも恵まれた。前の週に、天気予報をチェックしたら、けっこう気温が低めだったので、ダウンコート、毛糸の帽子から、レッグウォーマーまで準備して、防寒対策ばっちりだったが、急に暖かくなり、晴れた日中は、街を歩く人々はけっこう薄着で、半袖Tシャツにショートパンツ姿のイギリス人観光客もいたし。


で、印象に残った観光スポットは、

○サン・シル・ラポピー
<フランスの最も美しい村(という名の協会から、一定条件を満たして認定された村)>の一つ
ロット川の岸壁上に位置する村で、ふもとの駐車場から、中世そのままなのであろう、家並みと美しい渓谷の風景を見ながら、坂道(途中から石畳)をえっちらおっちら登って、教会と村の中心広場を目指す。
村の規模にしては、レストランが多く、調べたら、人口200人程度というから、やはり観光客がたくさん来るのだろう。宿も少なそうだけど、10時過ぎまで明るい夏なら、ここでのんびり夕ご飯を食べて、近くの大きな町のホテルに戻る、っていうのもありだな。
曇っていて肌寒い日の夕方に行ったので、ダウンコートを着て、坂の上り始めたのだが、途中で、暑くなって脱ぐ。しかし、広場でお茶をして、夕暮れ近くに駐車場に向かって坂を降りる頃は、寒くなり、ダウンを着て来て正解だったと思うほど。

ドル・サン・シル・ラポピーDscn0479
(あの教会を目指して歩く)


○ラスコー
ドルドーニュ滞在中、天気の悪い日に行こう、と決めていたのが、社会の教科書(中学のか?)に出ていたラスコーの洞窟。
朝から曇っていた日に、まずは、鉄道駅のある大きな町サルラに行き、ランチ。我が家は息子が偏食なので、旅行中は、まともなレストランに行くことは滅多になく、いつも昼は子ども用メニュー(粗びき牛肉のステーキかチキン・ナゲットが定番)があるようなビストロ(庶民的レストラン)かピザ屋で済ませ、夜は自炊、というパターンが多い。ところが、サルラで夫が目ざとく、粗びき牛肉ステーキとフライドポテトの子ども用メニューがあって、ちょっとおしゃれなレストランを見つけ、フルコースを頼み、前菜にフォワグラを選ぶ。やっぱりドルドーニュに来たら、これを食べないとね。美味しかったけど、フォワグラの大きさに比べ、パンが小さかったな。

ドルフォアグラ
(あまり料理の写真って撮らないんだけど、フォワグラ)

その後、車で30分ほどのラスコーへ向かう。洞窟は、忠実に再現されてるとはいえ、あくまでレプリカなので、ありがたみも薄れるが、それでもチケット売り場には列ができていて、15分ほど並ぶ。レプリカのくせに洞窟内は撮影禁止。ガイドの説明によると、本物の洞窟はスピリチュアル・スポットらしいので、ますます、がっかり。
洞窟に入る直前は曇り空だったが、ツアー中に雨が降ったらしく、出てきたら、地面は濡れていたが、日が射していたという、タイミングのよさだった。
後で、貸別荘のマダムに聞いたら、夏のハイシーズンは、長蛇の列で何時間も待つこともあるのだとか。レプリカにも関わらず、ネームバリューのせいで、人気スポットなのだな。

○ドンム
13世紀に造られた要塞都市で、ここも<フランスの最も美しい村>の一つ。展望台からの眺めは絶景。
息子は町中を走る観光電車プチ・トランに乗りたがったが、ちょうど鍾乳洞ツアーの始まる時間だったので、そちらを優先。ここは本物なので(?)もちろん撮影禁止。
洞窟に入る前はいい天気だったのに、出てきたら、しとしとと雨が降っていたので、プチ・トランを諦めると、息子は不機嫌に。お菓子でも食べに行こう、となだめ、広場のクレープ屋に入る。雨があがって、店を出ようとしていた時に、レジに飾ってあった、ホットウィールのミニカーを目ざとく見つけた息子が「これいくらですか?」と聞き(ミニカー禁断症状か?)、売り物じゃありません、と言われる。私に叱られながら、歩いていた息子に、後ろから走って追っかけて来たクレープ屋のお兄さんがそのミニカーをそっと渡してくれる。
ミニカーをもらったから言うわけじゃないけど、この村は、人がとても感じいい。観光案内所の女性から、土産物屋のマダムも、営業スマイルではない、やさしい笑顔だったし。

ドルドンム展望台
(展望台からの眺め。川のある風景っていいよね)

ドンムは貸別荘から近かったこともあり、翌日午前中、プチ・トランに乗るために、再び足を運ぶ。
ちょうど、朝市をやっていて、地元養蜂家のハチミツ屋台に寄る。そこのマダムも感じがよくて、タンポポ、アカシア、そして野花は、春、夏、秋と採取季節によって色も味も違うのだが、それも一つずつ全部、味見させてくれ、効能も説明してくれる。タンポポは解毒作用が高い、喉の痛みに一番効果があるのはアカシア、などなど。常日頃から、「スーパーで売っているハチミツはまずいし、専門店は高い」と言っていた夫はここぞとばかり、タンポポ、アカシア、野花(夏バージョン←私が選んだ)、栗のハチミツを買い込む。
その隣の屋台で、フォワグラ、向かいでさらにロバ乳の石鹸まで買う(一つ4ユーロ、3つで10ユーロ!につられて、3つ購入)、お買い物モードに。駐車場に戻って、車のトランクに買ったものを仕舞ってから、息子待望のプチ・トランに。ものの15分ほどだったが、天気もよく、暖かく、中世の家並みも美しく、いい気分に。
城壁で囲まれた村なので、大きな門があるのだが、そのすぐ近くのピザ屋に行ったら、生地の薄いおいしいピザで、一人で切り盛りしている店主のムッシューも感じよく。デザートのパンナコッタには、自家栽培の無農薬フランボワーズソースがかかっていて、美味。

ドル・ドンムの朝市
(朝市)


ほんと、この村、人がみんな感じよく、村を歩いていると、なんだか幸せな気分になり、ひょっとしたら、スピリチュアル・スポットかも、と思って、ウィキで調べてみると、14世紀にはテンプル騎士団の騎士たちが投獄されていたり、百年戦争中は、仏英軍の奪い合いの地になっていたり、ユグノー戦争で、プロテスタントに占領されたり、とけっこう血なまぐさい歴史が・・。
ピザ屋でランチをしている時、英語なまりのフランス語を話すイギリス人ムッシュが、「うちの泊り客のために予約したいんだけど」と店主に話しかけているのを耳にして、夫が、「イギリス人がここに住んで、同胞を客に宿を経営しているんだな」。先祖が占領していた土地だから、馴染みがあるのかなぁ、と言ったら、夫は、「イギリスなんぞに住んでいたら、そりゃ、気候がよくて、景色もきれいで、食べ物もおいしいところに来たくなるだろうな」と、愛国心むき出しに、得意顔で答えた。

○カステルノー
百年戦争の時にはイギリス軍の拠点になっていた、カステルノー城。お城は外観の写真だけを撮って、素通りすることが多かったが、ここは中が武器博物館にもなっているので、入場料を払って入ることに。石畳の城下町があり、投石機カタパルトが展示してあったりで、『王の帰還』のゴンドールの首都ミナス・ティリスを思い出す。

ドルカステルノー
(カステルノー城)
ドル・カステルノー投石
(城とカタパルト)


○ロカマドゥール
深い谷を見下ろすように崖の上に築かれた村、ロカマドゥールは、私の好きなヤギのチーズの名前で、ここに行けばチーズ屋がずらりと並んでいるのかと思いきや、革製品やフォワグラを扱う土産物屋が並ぶ通りで、チーズを売っている店は一件しか見つからず、夫が「観光客向けで高いに違いないから、貸別荘の近くのスーパーで買おう」とけちなことを言う。
チーズのことしか頭になかったが、後で調べたら、有名な巡礼地で、特に礼拝堂に祀ってある黒い聖母像が有名らしい。この礼拝堂、中に入ったのに、私は聖母像に気付かず。夫に「知ってた?」と聞いたら、「え?きみ、見なかったの?」と言われた。異教徒の私には見えなかったのか?ああ、ちゃんと下調べをしておけばよかった、と後悔。実は、夫が珍しくこの礼拝堂の前で二人で写真を撮ろうと言い出し、息子に撮らせたのだが、そこにマリア様のお姿でも写ってないか、と期待したが、ヤギの霊すら見当たらず。
悔しい。いつか戻って来るぞ、ロカマドゥール。ああ、ロカマドゥール旅行の観光ガイドをしてください、なんて仕事の依頼が来ないだろうか?ってムシのいい話だよね。

ドル・ロカマドゥール
(ロカマドゥール)
ドル・ロカマドゥール礼拝堂
(礼拝堂のフレスコ画)


旅行中、私の風邪が直った頃に息子が鼻をすすり始め、最終日には夫が鼻をぐすぐすさせながら600キロほどの帰路を運転。まあ、それ以外は、景色は素晴らしく、天気もまあまあで、暖かく、てべ物もおいしく、人もとっても感じがよく(貸別荘のマダムも採れたての野菜と卵をプレゼントしてくれたし。・・温暖な気候の中、美しい風景に囲まれて生活していると、心が優しくなるのか?)、貸別荘も居心地、使い心地がよかったので、今回の旅行は満足!季節を変えて、また来てもいいな、という気になった。ただ、夏はすごい人出らしいので、次回は、日も長く、暑くも寒くもない(まあ、年によって違うのだけど)、春先かな。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

初めまして、去年の記事にコメントすみません。これからドルドーニュに出発する者です。毎年、夏にドルドーニュに訪れています。今年も8月に行ってきたばかりですが秋は初めてなので気温が知りたくて検索してたら偶然こちらの記事を見つけたので楽しく読ませていただきました。

実は北イギリスから車(初挑戦)で向かいます。
パリからでも休憩時間入れて7時間かかるんですね!
運転は我が家も旦那さんなので私は呑気なものですが長旅ですね。

最近、英国の夜間学校で初級フランス語を習いはじめました。
フランス語、難しいですね、、

また覗きに来ますね。







Re: No title

mancunianさま

こんにちは。確かにドルドーニュといえば、夏に川遊びが盛んなところですよね。でも、秋の紅葉は素晴らしかったですよ。

では、また。

江草

> 初めまして、去年の記事にコメントすみません。これからドルドーニュに出発する者です。毎年、夏にドルドーニュに訪れています。今年も8月に行ってきたばかりですが秋は初めてなので気温が知りたくて検索してたら偶然こちらの記事を見つけたので楽しく読ませていただきました。
>
> 実は北イギリスから車(初挑戦)で向かいます。
> パリからでも休憩時間入れて7時間かかるんですね!
> 運転は我が家も旦那さんなので私は呑気なものですが長旅ですね。
>
> 最近、英国の夜間学校で初級フランス語を習いはじめました。
> フランス語、難しいですね、、
>
> また覗きに来ますね。

おすすめ情報

おすすめ情報

プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター。立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。PRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発情報誌『ビズ』を創刊。現在、日本の雑誌やWebにフランスの情報記事、コラムなどを寄稿しながら、日仏バイリンガルサイト『ビズ・ジャポン』の編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。

最新記事
カテゴリ
ヴぉわいやーじゅ
おてる
ヴぉわちゅーる
あしゅらんす
うぃふぃ
レストラン予約
ふらんせ
あまぞん
せっと おーんず
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード