タルコフスキーの『ストーカー』をバスティーユで観る

 毎週水曜日に届く、Télérama誌をぱらぱらとめくっていたら、アンドレイ・タルコフスキーの『ストーカー』の1シーンを切り取った写真が目に飛び込んで来た。パリで最も汚い映画館(と私が思っている)、La Bastille 一館のみでの上映だ、修復版で。
この映画、フランスに来てからは一度も観ていない、ということは、20年以上、観ていないのだ。
 仕事が忙しくなる前に観に行こう、と映画館に行く日の目星をつける。が、その日は、ノルマンディのヴィランディ城でこの夏開催される、赤木曠児郎先生の展覧会『アカギの版画パリ百景』のプレス向け日帰りバス旅行の翌日だ。朝8時半にオペラに集合、戻りが21時。しかも、一緒に参加するノルマンディ在住の友人が、前日、うちに泊まりに来ることになっている。久しぶりに会うから、夜遅くまでおしゃべりしてしまうかもしれない。展覧会の後は、ワインカーブにも立ち寄る。そこで試飲して、帰りのバスの中で居眠りしたら、夜、眠れなくなるかもしれないし・・、と睡眠不足の状態で、タルコフスキーの作品を映画館に見に行くことへの不安がつのる。
 しかも、最近、エリック・ロメールの初期短編集Prélude 1&2が上映され、上映時間の都合で、先にPrélude2を見に行ったが、暑い日にクーラーの効いた涼しい上映室が心地よく、うとうとしてしまった。“6つの短編映画”と紹介されていたが、どうしても、4つしか思い出せず、まさか、2編はまるまる熟睡していたのか、と、ビビったが、その後Prélude1を見に行ったら、2編だけだったので、両方合わせて6編だったのか、とほっとする。実は、このPrélude1も途中、うつらうつらしたのよね。そう、この頃、映画館でよく寝てしまうのだ。そんな時期に、タルコフスキーかぁ。

ただ、“私的タルコフスキー作品と眠りの法則”なるものがあって、一度、最後まで眠らずに見ることができた作品は、再観しても睡魔に襲われることがない。
『惑星ソラリス』は、初めて見た時には寝たが、二度目は眠ることなく完観し(って言葉あるのかな?最後まで眠らずに観る、という意味に使いたい)、三度目も完観。『ストーカー』は、初見で全く眠らず(一緒に観たヤツは、鼾までかきやがった)、二度目、三度目も完観。『サクリファイス』は初見で寝て、二度目は眠らず、でも、あまり好きな作品ではないので、その後は一度も見ていない。『ノスタルジア』は、なんと二度も眠ってしまい、三度目の挑戦(?)は、昼食を腹6分目くらいにおさえ、映画館に入る直前にコーヒーを飲み、やっと完観。その後、映画館で、5回ほど見たけど、一度も眠っていないぞ(自慢にならないかもしれないが)。
『鏡』は、一度しか見ておらず、完観。『アンドレイ・ルブリョフ』も一度しか見ていないが、ほとんど寝ていたので、どんな映画だったのかも知らない(『ローラーとバイオリン』との二本立てで、こちらは完観、短編だし)。

さて、プレス旅行の日は、とても天気がよく、シャトーの美しい庭園の散歩には最適、いや、ちょっと暑かったか。ランチは、庭園内にある菜園で採れたオーガニック野菜を使った、魚がメインのヘルシーな料理を城主さま(地味な痩せ気味のおっさん)と共にする。城内の展示会場も素晴らしく・・。

赤木先生
<赤木先生にポーズをとってもらう>

その後、ヴァルメール城に行き、美味なるトゥーレーヌのスパークリングワインを数種類試飲し(もちろん購入)、案の定、帰りのバスで爆睡。
少し前の洪水のせいで、道を迂回しなければならなかったせいもあり、バスのオペラへの到着時間が遅れ、タイミングの悪いことに、この日は、我が家に向かう郊外線が工事のため、最終電車が21時59分、それにほんの5分くらいの差で乗り遅れ、他の国鉄線に乗り、途中駅から代替バスに揺られ、家に着いたのが、0時近く。で、当然、床に就くのが遅く、翌日は、子どもを学校に送り出すために、早起き。

『ストーカー』を見逃したくないし(だって、20年以上観てないんだよ)、“私的タルコフスキー作品と眠りの法則”が生きていれば、眠らないはずなので、映画館に向かう。

昔、千石駅近くにあった三百人劇場のロシア映画祭で、タルコフスキー作品を観るために5枚綴りの前売りチケットを買ったのに、タルコフスキー作品だけ、連日超満員で、何時間も前に並ぶのも面倒くさいし(再観だし)、と、仕方なく、特に興味のない作品を観た、嫌な思い出がある。
で、少し早め、開場20分くらい前に行ったら、列が・・、と言っても5人程度の。それでも、ワクワクしながら、上映室に入るが、周りを見回すと、明らかに私よりも年上か同年代の人ばかり、男性も女性も・・。フランスの若者よ、タルコフスキーを見に来んか!まあ、15時の回だったので、昼間忙しい、若者たちは夜来るのかもしれないが。

で、結局、寝てしまった・・。私的法則は通用せず・・、20年が過ぎて、免疫がなくなった?
まあ、睡眠と覚醒の狭間でタルコフスキー作品を観るのも、また、至福の体験なんだけどね。

ところで、このメルヘンチックなポスターは何なんだ?
ストーカー仏


ストーカーといえば、『部屋』の前に3人が座っている、このポスターでしょう。東京にいた時、部屋に貼っていた記憶が。
ストーカーポスター日


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No title

江草さん、私と銀座の映画館で観た時も途中寝てましたね^^このポスターはちょっとなぁ・・・(苦笑)映画館に観に行きたくなる「気」をもよおさないですねぇ。1980年代後半の東京のポスターに軍配っ!

No title

えー、そうだっけ?寝てたっけ?覚えていない・・。

1980年頃に大井武蔵野館で鑑賞。

江草さま

 ほぼ20年振りに、タルコフスキーの「ストーカー」を鑑賞しようと期待に胸膨らませて映画館に向かったものの、疲労の蓄積が祟り、館内で爆睡されたとの由、それはそれは、お気の毒です。

 私は、その映画は確か1980年から82年頃に、大田区大井町駅の付近にあった「大井武蔵野館」の深夜興行で、このストーカーを何回も鑑賞。都会の日常生活に疲れ、心の底に溜った澱みや滓が、この映画を見る度に浄化され、精神の深いところで癒される思いがしたものです。
 忘れられない映画です。

 で、寝過して見逃した人に朗報です。
 世にも著名な動画共有サイトに、そのものずばり、この映画が掲載されています。私が確認したのは、前後2回に分割された方式で、字幕は無し。
 他の作品も、「鏡」「惑星ソラリス」「ノスタルジア」などが掲示されています。掲示者は旧・ソ連の映画の配給会社と関係があるのでしょうか? 別に、字幕が付いた作品も掲示されています。
 また、タルコフスキー監督の他にも、著名な映画がその著名な共有サイトとに出展されています。
 ご関心あれば、検索なさってみて下さい。検索要素が、キリル文字で表記されている所為か、私の安物の文字変換ソフトの機能では表記できません。悪しからず、御了解下さい。

 お元気で。

Re: 1980年頃に大井武蔵野館で鑑賞。

Yozakuraさま

こんにちは。大井武蔵野館って聞いたことのある名前ですが、行ったことがあるかどうか、記憶になく・・。日本の名画座はオールナイトでいい映画をかけていましたよね。今もかな?名画座がどんどん減っていると聞きますが。私は映画は映画館で見たい方なので、ネットの動画はちょっと・・。テレビドラマはネット動画でよく見るのですが。

では、また。



> 江草さま
>
>  ほぼ20年振りに、タルコフスキーの「ストーカー」を鑑賞しようと期待に胸膨らませて映画館に向かったものの、疲労の蓄積が祟り、館内で爆睡されたとの由、それはそれは、お気の毒です。
>
>  私は、その映画は確か1980年から82年頃に、大田区大井町駅の付近にあった「大井武蔵野館」の深夜興行で、このストーカーを何回も鑑賞。都会の日常生活に疲れ、心の底に溜った澱みや滓が、この映画を見る度に浄化され、精神の深いところで癒される思いがしたものです。
>  忘れられない映画です。
>
>  で、寝過して見逃した人に朗報です。
>  世にも著名な動画共有サイトに、そのものずばり、この映画が掲載されています。私が確認したのは、前後2回に分割された方式で、字幕は無し。
>  他の作品も、「鏡」「惑星ソラリス」「ノスタルジア」などが掲示されています。掲示者は旧・ソ連の映画の配給会社と関係があるのでしょうか? 別に、字幕が付いた作品も掲示されています。
>  また、タルコフスキー監督の他にも、著名な映画がその著名な共有サイトとに出展されています。
>  ご関心あれば、検索なさってみて下さい。検索要素が、キリル文字で表記されている所為か、私の安物の文字変換ソフトの機能では表記できません。悪しからず、御了解下さい。
>
>  お元気で。

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プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター。立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。PRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発情報誌『ビズ』を創刊。現在、日本の雑誌やWebにフランスの情報記事、コラムなどを寄稿しながら、日仏バイリンガルサイト『ビズ・ジャポン』の編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。

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