キッチンのリフォーム

引っ越し10年目にして、キッチンをリフォームした。

築50年の我が家のキッチンは、前の持ち主が、一度リフォームしているが、それでも、入居前に再リフォームするかどうか迷うほど、古びた感じがした(予算の都合で見送り)。
奥のモノが取り出しにくい戸棚タイプのキャビネットが中心で、コの字型キッチンのコーナーの一つは、完全なデッドスペースで、もう一つは、中に入れたものを取り出すのが面倒なので、滅多に使わないもの(=実は必要のないもの)しか入っておらず。で、最近は、引き出しが外れて落ちたり、蛇口が水漏れしたり、シンクの下から嫌な臭いもするようになり・・。

FC2キッチン前1
(コーナーが完全なデッドスペース)

FC2キッチン前2
(引き出し、落ちてるし)

FC2キッチン前3
(吊り棚の下が使いにくい)

リフォームして、鍋類も入る深めの引き出しや、コーナーを活かす回転式シェルフを取り入れれば、使い勝手もよくなり、収納量も増えるし、と夫に提案すると、最初の一言が、「どれだけ、金がかかると思ってるんだ」・・フランス人は基本的にケチです。

夫への説得工作は、
・新しいキッチンは、家の資産価値を高める。
築20年で家の資産価値は0になるとも言われる日本と違い、フランスでは、古い家でもリフォームを繰り返して、住み続けるので、20世紀初頭に建てられた家なども普通に売買されている(逆にこの時代の家は外見が趣があって、高かったりする)。今、キッチンをリフォームしておけば、10年後に売却するとしても、十分きれいだろうし(きれいに使おう、っと)、特にキッチンのリフォームはお金がかかるので、それが必要か否かが、購入の決め手になることも。そう、家を買うと、リフォーム以外にも、引っ越しとか家具の購入でお金がかかるので。賃貸するにしても、キッチンがきれいなら、借り手を見つけやすいだろうし。
・何より、自分たちにとって、新しいキッチンは、使っていて気持ちがいい。特に我が家は夫が料理をすることが多いんだし。
の2点をまず、強調。
そして、平面図にイケアのサイトで選んだキャビネットをレイアウトしたプランを作って、夫にプレゼンテーション。
「でも、工事は1週間はかかるから、その間、キッチンが使えないのは不便だぞ」と、なるべくリフォームしない方向に持っていきたいらしい“敵”に対し、
「じゃ、ヴァカンス中にやってもらおうよ」と提案する。
というのも、この夏は、7月にスペインに3週間行く予定だったのだ、夫と子どもが二人で先に車で出かけ、私は1週間後に飛行機で合流する我が家の夏のヴァカンス・パターンで。さっそく、10年前、この家に入居する時に壁紙張り、ペンキの塗りなどをお願いした、日本人の職人さんに連絡すると、ラッキーにもその時期の工事が可能だという返事。彼は仕事が丁寧だし、何より留守中に、安心してカギを預けられるというのが大事なポイントだ。見積もりを出してもらったら、夫が「高い」と言い出す(何にでも文句をつける性なので)。それで、廃材(取っ払った古いシステム)の処理をこちらでやることにして、その分の費用を引いてもらって、夫も納得。月に一度、粗大ごみ回収の日があり、廃材はその日に道に出しておけばいいので。

 夫の気が変わらないうちに、と夫の仕事が休みだった平日の午後に、車で20分ほどのところにあるイケアへ。展示スペースの色々なキッチン・システムを見てから、パソコンのディスプレイ上でキッチンの3Dプランニングをするコーナーへ。店員さんに操作方法を教えてもらい、自分たちでプランニングを始める(店員にプランニングをしてもらうと有料)。どのキャビネットを使うかは、すでに決めていたにも関わらず、ツールの操作に慣れるまで時間がかかり、保存を忘れ、途中まで作ったものが消えちゃったり、で、気が付けば、夕食の時間が迫っている。プランはイケアのサーバーに保存しておけば、家のパソコンからもアクセスできるので、息子に「夕食が遅くなるから、ポテチでも食べていて」と電話してから、とりあえず、出来上がったところまで、印刷しておこうと思ったら、プリンターが壊れていた。まあ、フランスだから、仕方がない。
 家に戻って、プランを完成すると、選んだ商品の価格まで入ったリストが同時に出来上がる。なかなか便利だ。

 日曜の朝、開店時間に合わせてイケアに行ったところ、入口に行列が。セール中でもないのに、やっぱり人気なんだわ、イケアは。キッチンコーナーに急ぐも、受付には、すでに列が。でも、思ったより、店員がてきぱきと動き、ほどなく、自分たちの番になり、印刷したプランとリストを見せると、「そのまま、レジへどうぞ」って、最初からレジに向かえばよかったのだな。
配達予定日は、ヴァカンス一週目で、夫と子どもはすでにスペインに発った後なので、私が受け取ることになり、職人さんに連絡して、その日から工事を始めてもらう段取りに。

そして、“工事のための準備”に取り掛かる。
まずは、イケアからの配達物(けっこうな量)を置く場所を確保するために、地下ガレージを整理し、この機会にガラクタ類(錆びたスコップとか、取っ手の折れたバケツとか・・なんでこんなモノ、取ってあったんだか)をゴミに出す。キッチンも収納のデッドスペースや戸棚の奥にあった不用品(すでに本体を捨てた調理用ミキサーの付属品とか、赤ちゃん用マグカップとか)、賞味期限を3年くらい過ぎている調味料の類などを処分。食器、調理器具の類は最低限必要なものを残して、プラスチックの収納箱に入れ、地下室に運ぶ。
夫は“いつか役に立つに違いない”モノをため込む癖があり、「紅茶の空き缶を20個くらい地下室に積んでいるのよ”と知人に愚痴ったら、「一つや二つ、黙って捨てても、気づかないんじゃないですか?」と言われたので、試してみたら、その通りだった。
で、今回も、夫との合意の元で捨てたもの以外で、あまり取っておきたくないもの(ふちの欠けた皿など)は、夫たちがヴァカンスに出た後に、捨てることに。

工事の前日に、キッチンを空にする。電気ポットとオーブントースターと炊飯器とスチームクッカーをリビングに持ち込み、紙コップや紙皿を用意し、工事開始からスペインに出発するまでの5日間(工事のない土日含む)、キッチンなしで生活できるように、準備万端整える。友達と夜ごはんを食べに行く約束もあるし、いざとなれば、近くのマクドナルドに行けばいいし。

工事初日は晴天。イケアの配達は予定通りの時間に(さすが)。工事は、キャビネットの設置だけではなく、キッチンの壁、窓枠のペンキ塗りから、電気コンセントの増設、水の配管工事まで頼んだので、けっこう大掛かりになった。
職人チームは、Hさんとその大学生の娘さん(夏休みのバイト)と二人の職人さん。みんな、在仏日本人だ。昼ごはん用に、とホットプレートと焼き肉の材料、日本製の焼き肉のタレに、炊いたご飯まで持って来たので、私もお相伴にあずかる。庭のテラスで、焼き肉を食べて、ヴァカンス気分に。翌日は、ゆでたうどんとだしつゆを持って来てくれて、こちらもビールを買って、冷やして置いたり(冷蔵庫はリビングに移動してそのまま使い続ける)、工事3日目は、再び焼き肉だったので、ご飯を炊いておく。職人さんの一人がデザートを持って来てくれて、Hさん、「普通だったら、サンドウィッチで済ますよね。こんな贅沢な現場はないよ」と自慢する、確かにグルメな工事現場だ。
古いシステムを取り外して、電気工事が済み、キャビネットの組み立てが始まるところまで見て、私はオルリー空港に向かう。スペインのコスタブランカの貸別荘にWIFIがあるので、「何かあったら、LINEで連絡して」とHさんの娘さんに頼む。便利な時代になったものだ。

ちなみに、スペインは物価が安いので、私たちが借りたプール付き別荘の1週間の料金が、Hさんがこの仕事が終わった後、二人の娘さんとロンドンに3日間遊びに行くことになっていて、そのホテルの宿泊費とほぼ同額だという。まあ、大都市ロンドンとスペインのリゾートを比較しても仕方ないか。

FC2キッチンスペインの家
(スペインの貸し別荘)

FC2キッチンスペインの家庭
(こんな庭まで付いていた)

FC2キッチンスペインの家テラス
(キッチンから直接出られる、テラスからの眺め)

FC2キッチンスペインの家プール
(テラスの目の前にプールが)

7月下旬に、どきどきしながらスペインから戻って来たら、輝くばかりの白いシステム・キッチンが完成している。天板に無垢材を選んだので、木の香りとリフォーム後の独特のいい匂いがする、と思ったのだが、夫は「臭い、臭い」と言って窓を開ける。
一つ一つ点検していくと、少々問題点が・・。
・換気扇のフードの出っ張りのせいで、その隣にあるコーナー用キャビネットの扉が半分しか開かない。→ここは引き出し式フードタイプの換気扇を付けるべきだったのだ。「だから、換気扇なんていらないと言っただろう!」と夫が怒る。でも、やっぱりガスレンジの上には換気扇がないとなぁ。
・スライド式キャビネットを設置するはずの幅20センチのキャビネット二か所に蝶番で開くタイプの扉が付いている→中に取り付ける収納アクセサリーの在庫がなくて、入荷が8月頭、と言われたので、後から付ける旨、言っておいたはずだが。ノブが開き扉用に端っこに付けられているので、「スライドタイプなら真ん中に付けるから、買い直さなきゃいけないじゃないか!」と夫が再び怒る。
・ガスレンジのすぐ下にあるはずの引き出しが、足元に付いている。→ガスのゴム管があるせいで、上には付けられなかったのだ。

上記、Hさんにさっそくメールするが、他の仕事が入っているし、息子と私が、7月末から8月中旬まで、日本に帰国するので、私たちがフランスに戻って来てから、解決しましょう、ということに。どうせ、8月まで、収納アクセサリーは手に入らないし。

フランスに戻り、8月下旬に再びイケアに。換気扇はフードが引き出し式のタイプを買い直す。というのも、Hさんがちょうど別のキッチン工事をしているので、前の換気扇を下取りしてくれることになったのだ。
スライド式収納アクセサリーは、モデルチェンジして、前より値段が高くなり、夫がブツブツ文句を言う。扉に関しては、取っ手を付けてしまった扉をもし、何とか使えるなら、返却すればいいから、と一応、購入。
レンジ下の引き出しに関しては、スチール製なので(ガスのゴム管に当たらないように)カットができないので、工事前にその部分にあった、奥行きの短い、木製の引き出しを捨てずに取ってあるので、それ新しい引き出しの前部に付けられないか、と夫が無謀な提案をする。

で、8月末にHさんと職人さん一人が来て、換気扇を交換。キャビネットのサイズが新しい換気扇には合わなかったのを、工事で余った木片を利用し、改造して、設置。これで隣のキャビネの扉が、ちゃんと開けられるようになった。
レンジ下の引き出しはグラインダーでカットして、奥行きの短い引き出しを作り上げる。素晴らしい、フランス人の職人は、ここまではやってくれないだろう。
スライド式キャビネットは、横幅が短いので、取っ手が端に付いていても、何の問題もなく引っ張って開けることができた。疑い深い私は、アクセサリーにオイルやしょうゆの瓶を置いて、引っ張ってみたが、何の問題もなし。
ばんざーい、これで、さすがの夫もケチのつけどころのない、思い描いていたとおりのキッチンが完成だ~。

FC2キッチン新1
(デッドスペースだったところにもスライドタイプの収納を)

FC2キッチン新2
(吊り棚の高さを少し上げて、すっきりと)

FC2キッチン新引き出し
(奥のモノが取り出しやすい、スライド式キャビネット)

FC2キッチン新回転
(コーナーには回転式シェルフを)

以来、毎日、うきうきとキッチンを使っている。傷つきやすい無垢材の天板は、水をこぼしてだけでもすぐに拭き、シンクも使った後は必ずタワシで磨くなどなど、こまめに掃除をしているのだ、今のところは。
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江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター。立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。PRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発情報誌『ビズ』を創刊。現在、日本の雑誌やWebにフランスの情報記事、コラムなどを寄稿しながら、日仏バイリンガルサイト『ビズ・ジャポン』の編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。

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