パリでこけしを売る 其の一

今年の初め、パリで旅行関連会社に勤めるKさんから、「こけしをフランスで一緒に売らない?」と誘われた。
こけしぃ?と最初はピンと来なかったのだけれど・・・。

以前、パリでこけし専門店を経営しているフランス人のムッシューがいて、色々な展示会でご一緒したことがあるのだが、確かに、こけしはよく売れていた。
特に忘れられないのが、2012年の4月から5月にかけて、アクリマタッション公園で5週間にわたる、日本祭が行われ、公園のメインストーリーに、たくさんの展示販売ブースが並んだ時のこと。和小物からお弁当、たこ焼きまで色々なものが販売され、ビズジャポンも一つブースを構え、週替わりでテーマを変えて、会員の作品を展示した。で、ビズの隣の隣がそのムッシューのこけし屋であった。その5週間、たいへん天気が悪く、しかも寒くて、復活祭のヴァカンスに重なっていたにも関わらず、人出が少なかった。にも、かかわらず、こけしの店だけは繁盛しており、他の出展者の間で、「雨が降っても風が吹いても、こけしだけはよく売れる」と羨ましがられていたのである。
その時は、なんで、あんなものが売れてるんだろう、と横目で見ていたのだが。

そのムッシューは、数年前に定年退職して、店をたたんだらしい。自営業で定年退職っていうのも変だが、まあ、要するに年金のもらえる年齢になったのだろう。ライバルがいないということは、チャンスかも。

こけしをパリで売る

さっそく、ネットでこけしを検索し始める。
こけしの産地は東北で(そのくらい、何となく知っていた)、11系統に分かれてるんだー、色々なかたちや顔があるんだなぁ(当たり前だけど)、なんて調べていると、次第に興味が湧いてくる。

Kさんが、ネット上でオークションに出ているこけしなんかを見ながら、「この子、かわいいでしょう?」 などと言うので、最初は「この子、って・・」とびびっていたが、そのうち、自分も「この子、ヴァーチャルじゃなくて、本物を見てみたい~」なんて、つぶやくようになる。

フランスで長年、展示会の仕事を手掛けている日本人女性にもさりげに、相談すると、
「こけし、いいんじゃない?フランス人は木製のものが好きだし・・」。
木製品に限らず、フランス人って、麻とか、和紙とか、自然を感じさせるものが好きだという印象がある。職人を敬う国でもあるし。
「・・こけしに対するパッションがあれば、うまくいくかもしれないわよ!」とアドバイスを受ける。
パッションかぁ。

こけしといえば、温泉である。
というのは、そもそもこけしは、東北の木地師(ろくろを使ってお椀やお盆などの木工品を作る職人)が、温泉の湯治客への土産物として作りはじめたもの。最初は子どものおもちゃだったらしく、あの形状は、赤ん坊でも握りやすいように、工夫されたとも言われている。木製だから落としても壊れないし。それが、いつの間にか、心身回復(湯治場だからね)、五穀豊穣(米どころ東北だし)、さらには子宝に恵まれる(商品戦略っぽいが)縁起物として、知られるようになったのである。

ちなみに、こけし=子消し説というものがある。ウィキペディアによると、<堕胎した子を慰霊するための品物とみる説で、1960年代に詩人・松永伍一が創作童話の作中で初めて唱えたとされる。しかし、松永以前の文献にはこの説を裏付けるような記述が見られず、松永自身も説得力ある説明はしていない。明確な出典が存在しないため民俗学的には根拠のない俗説とされる>。研究者じゃなくて、詩人、つまり創作、イマジネーションで生きている人だから、何を書いても自由なんだけど、こけしにとっては迷惑な話だな。

と、先日、Merciのシネマ・カフェでお茶した長谷川たかこさんが、「あら、私、フランス人に、こけしは水子供養のためのもの、って説明しちゃったわ」って、日本の国民的アニメの登場人物(のモデル)が、そんなこと言っちゃ、何も知らないフランス人が信じちゃうでしょうが!と怒りかける。そう、『サザエさん』の作者、長谷川町子の姪っ子、ワカメちゃんのモデルと言われている方です。まあ、『サザエさん』の仏訳は今のところ出ていないのだが。

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<在仏30年の長谷川さんが、現代フランス事情を、結婚観、ヴァカンス、テロ問題などなど幅広いテーマを、パリに暮らす日本人の目で捉えた、力作>

話戻って、温泉である。そう、こけしを売るなら、こけしについて知らなければならない、工人さんを直接訪ねて、工房を見学し、買い付けをすることになるだろう。となれば、当然、温泉宿に泊まることになるであろう。
余生のライフワークの一環として、フランスで展示販売するためのこけしを買い付けながら、温泉を巡り、みちのくを旅する・・、なんだかとっても楽しそうだ。



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江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター。立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。PRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発情報誌『ビズ』を創刊。現在、日本の雑誌やWebにフランスの情報記事、コラムなどを寄稿しながら、日仏バイリンガルサイト『ビズ・ジャポン』の編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。

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