編集者が楽しんで作っている雑誌は、読者にも面白い。『こけし時代』  パリでこけしを売る 其の二

ネットで調べているうちに、『こけし時代』なる、その名のとおり、こけし専門誌が存在することがわかる。
発行人は、写真家詩人の沼田 元氣さん、発行元の木形子可=コケーシカは、沼田さん(小津安二郎の作品っぽく、“ま”にアクセントを置くのかな?)が、鎌倉の長谷の吉屋信子記念館近くにオープンした、こけしとマトリョーシュカの専門店。
出版社兼ショップ?

『こけし時代』のバックナンバーなら、ヤフオクやアマゾンで買えるよ、とKさんが教えてくれるが、ちょうど、2016年4月に、母校の海外支部交流会&交友会地域支部代表者会議にパリ支部長代理として出席するために帰国する予定であった。会場となる大学は池袋だけど、私は高校まで湘南の田舎町に住んでいて、地元に残っている高校時代の友人たちも多く、両親の居住している老人ホームも湘南にある。で、まずは、藤沢のホテルに滞在し、友人や両親に会い、鎌倉に行き、コケーシカを訪ね、それから、池袋に移動することにした。あわよくば『こけし時代』編集部を覗いたりできないか、と期待する。
で、交流会&会議は金・土曜の2日間で、私は月曜に日本に着き、藤沢のホテルに木曜朝まで滞在し、その後、池袋に移動する計画を立てていた。ところが、サイトで確認すると、コケーシカは、営業日が金・土・日・月曜で、しかも閉店18時。
月曜は羽田に15時半着だから、ぎりぎり間に合うか・・、ただ、念のため、閉店間際に伺う旨をメールしておく。いちおう、フランス在住で、日本滞在中に行けるのはこの日しかないことを強調して。まあ、向うにとっては知ったこっちゃないかもしれないが。
案の定、返事は来ず。

さて、飛行機が、到着予定時刻よりずいぶん早く羽田に着く(1時間近く、こんなことってあるのね)。これなら、『こけし時代』を買って、こけしもゆっくり見られるかも、なんて安易に考えていたが、思ったより、藤沢まで着くのに時間がかかり、ホテルに荷物を置いて、江ノ電に乗ったのは17時過ぎ。長谷駅で降りて、道に迷い、コケーシカに着いたのは18時10分。ドアは閉まっていたけど、明かりがついていたので、ドアをどんどん叩き、「メッセージを差し上げたフランスから来たものです~」と言ったら、「あ~、はいはい」と開けてもらえた。ありがたい。こけしの神様は、私を応援(?)してくれる。飛行機まで早く飛ばして下さって・・。

コケーシカは、こけしとマトリョーシュカ、それにこけし関連グッズなどがおしゃれに置かれている、こじんまりしたショップ。編集室らしきものはなく(当たり前っちゃ、当たり前か)、・・それとも2階にあるんだろうか?まあ、今の時代、パソコン一つあれば、どこでも編集作業はできるから、そもそも編集室なんてものは存在しないのかもしれないが。

『こけし時代』は、根拠なく、リニューアル前のクーネルみたいな薄さの雑誌をイメージしていたのだけれど、実際は、週刊誌くらいの版型で平綴じ、でもって分厚くて、背表紙が2センチくらいある(号によってはもう少し薄いものもあるが)。閉店時間も過ぎていたので、ゆっくり選べず(せかされたわけではないけど)、まずは、自分が気になっている、NO.6木地山、NO.7弥次郎、NO.11津軽(こけしの系統の名称です)の3冊を選んだら、それだけでずっしり重い。その後、すぐにホテルに戻るのではなく、友人と鎌倉駅の近くでごはんを食べる約束をしていたし、池袋までスーツケースを持って移動するので、今から、あまり重くなってもなぁ・・。次回帰国時にまた、別のバックナンバーを購入すればいいや、とその3冊のみ購入。息子に頼まれたコロコロコミック(これもけっこう分厚いマンガ雑誌)と『妖怪ウォッチ』のコミックも買わなきゃならないのだ。
「フランスでも宣伝してください」と『こけし時代』の宣伝パンフレットを渡される。バックナンバーの紹介と購入申し込み用紙がついている、ポスターサイズで、地図みたいに畳むと小さくなる、おしゃれな作りのパンフだ。しかし、パリでこれを配ったとして、フランスから申し込む人、いるだろうか?

で、『こけし時代』は、編集・発行人が写真家というだけあって、良質の厚い紙を使い、きれいな写真が満載。雑誌から溢れ出さんばかりのこけし、工人さんたち、風情ある温泉旅館、こけしの里の風景、そこに生きる人々・・。すでに亡くなっている伝説の工人さんたち、戦前の温泉街の様子などの記録写真も掲載されている。ポエムがところどころにちりばめられ(編集・発行人が詩人なので)、コレクター訪問記事があり、菅野 修の連載漫画も笑えるし(私のお気に入り)、楳図かずおの初期作品『人形少女』の一部が掲載されていたり、南伸坊や奈良美智がイラスト&エッセイを寄稿していたり、となんとも贅沢な雑誌である。また、この雑誌、ページの角が丸いんだけど、他にそんな雑誌ってあったっけ?この丸みはこけしの丸みから来ているのか?
一見、スタイリッシュだけど、内容は実に深く掘り下げてあり、伝統に重きを置いているが、重すぎない。カワイイ感があふれているが、そこに郷愁の感覚が同居しているせいか、軽すぎない。何よりも編集者がこけしへの愛をベースに、楽しんで作っているのが全てのページからありありと伝わって来る。訪ねたくて仕方なかったこけしの里を訪ね、会いたくてしょうがなかった好きな工人さんたちを写真に撮っている、という風に。


<楳図かずおの初期作品『人形少女』の一部が掲載されている号>


<私の好きな弥次郎こけしの特集号>


<分厚い上に、ふろくに別冊『今晃の世界・今晃の玩具』までついている。値段はその分、やや高め>

雑誌ってたぶん、読者ウケを狙っているものより、編集者が楽しんで、独りよがりくらいの気持ちで作っている方が読者にも面白く感じられるのだと思う。
比べるのはおこがましいが、私が作っていたフリーペーパーBisouも(あ、去年、また、Bisou Artのタイトルで復活して、2号発行したから、過去形じゃないか)、ぶっちゃけ、自分が興味があることをテーマに取り上げ、話を聞きたいと思った人にインタビューし、ペンネームを使って書きたい放題のエッセイまで連載していた、結構、やりたい放題なフリペであった。
私が興味を持っていることは、読者も興味あるに違いない、という思い込みと、いつ止めてもいい、という覚悟(投げやりと言えなくもない)で作っていたのだ。でも、そこそこ評判のいいフリペで、60号まで続き(去年復活してから+2号出した)、いまだに「まだ、バックナンバーを取ってあるんですよ」なんて言われることも。うれぴぃ。

ところで、『こけし時代』は広告が全く掲載されていない。『暮らしの手帖』のように、と言っても、商品テストページがあるわけじゃない。広告主の顔色を伺わず、自由に作りたいのであろう。

しかし、こんないい紙を使って、定価は号によって異なるけど、私が今回購入したものは1785円~3000円。何部刷っているか、知らないが、元、取れているんだろうか?
6号の“こけし後記”(編集後記ではなく)には、「あまり売れない」、「次号もゼッタイ買ってくださいネ」とある。

こけし好きを母数として、ファンは相当数、いると思うんだけどな。
この素晴らしい、雑誌がなくならないように、みんなで購入しよう!こけしに興味がなくても、温泉好きの方にはお勧め。で、これを読んだ人は、きっと、こけしが好きになる!はず。


<6号の菅野修の漫画で取り上げられている、童画家武井武雄のこけしポストカード>

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No title

温泉街の施設や宿に、2、3冊でもよいからお土産用こけしの傍らに置いてあれば、買ったかもなのに。商売っ気ないですよねぇ。(去年夏の白石キツネ村の後に泊まった温泉宿にはなかった^^;)

No title

そこまで手が回らないんじゃないかしら?

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プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター。立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。PRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発情報誌『ビズ』を創刊。現在、日本の雑誌やWebにフランスの情報記事、コラムなどを寄稿しながら、日仏バイリンガルサイト『ビズ・ジャポン』の編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。

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