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日本の小学校への体験入学~後編~

 登校初日の午後に、たまたま、1年生の親子懇親会が行われ、夫と参加する。体育館で親子一緒に、玉入れなどのゲームをやったり、子どもたちがダンスしたり、歌を歌ったりする様子を見たり。月曜の午後なのに、ほとんどのお母さんが参加していたのに少し驚く。というのも、フランスは女性の就業率が高いので、学校の親参加の集まりはたいてい土曜日に行われる。後から友人に聞いたら、それでもたぶん、半数くらいのお母さんは仕事(パートが多いそうだが)をしていて、休みをもらって来たのだろう、とのことだった。また、お父さんの参加がたった一人(夫の他にもう一人)、というのも日本ならでは、という気がした。ちなみに息子はダンス、歌はもちろんのこと(知らない踊り、歌だったし)、ゲームもほとんど参加せず見ていた。

 懇親会の後、お母さんたちが残り、教室で担任の先生が入学式から今日までの子どもたちの様子の変化を写真のスライドを見せながら、報告する。いつもデジカメを持って、子どもたちの姿をきちんと記録する、まめな先生で、確か入学式からの約3カ月で500枚くらい写真を撮ったと仰っていた。登校初日にも関わらず、うちの子がクラスメイトと輪になって国語の教科書を広げている写真もあって、感激。ただ、教室に入る直前に息子のその日の様子を先生に尋ねた時には、「給食の時に箸を振り回したので、叱ったら、怒ってしまいました」と言われたのだが。
その日、ウィークリー・マンションに戻って、「学校どうだった?」と聞いたら、うれしそうに「給食にごはんとお味噌汁が出たよ!」とケロリとしていた。

 翌朝、子どもを学校へ送って行き、それから仕事の営業回りに出かけようと準備をしていると、校長から電話が入り、「今日の午前中のプールの授業に付き添ってください、昨日はずいぶん、興奮状態にあったみたいなので、何かあったら困りますから」。仕事のアポは30分後にせまっており、しかも夫が「今日は何もないだろ?ちょっと浅草まで行って来る(夫は浅草が大のお気に入り)」と出た後だった。何で昨日のうちに言ってくれなかったのだろう?日本のお母さんたちは子どもの学校最優先で、学校の要請があれば、緊急時じゃなくてもすぐに学校に駆け付けるのが当たり前なのかな?と思いながら、「これから大事な仕事の約束があって・・、それにうちの息子はフランスでもプールの時間だけはきちんと他の子と同じことをしますから」と言うと、「ここはフランスじゃありません!」と一喝される。プールに日本もフランスもそんなに違いはないと思うが、この不況でたいへんな時に大事な仕事のアポを断れるか!と「それなら今日は見学させてください」と電話を切る。結局、その日は夫が迎えに行き、先生とは話が出来なかったが、息子はうれしそうに「プールに入った。シャワーに虹が出てたよ」。
 後でその話を姉にすると、「あんたは無理に頼んで自分の子どもを預かってもらっている立場なんだから、それはないでしょう」と説教される。確かに、学校、先生としては、正規の入学ではない生徒(書類上は転入生だけど)を預かり、その分責任もあるわけで、はっきり言って仕事が増えるだけだよね。では、外国からの体験入学者を受け入れることの学校側の受け入れメリットは?と考えると、「フランスの子どもたちは~、フランスの学校では~」というような、日本に住んでいては分からない異文化の様子を聞かせてもらえることを期待しているのだろう。うちの息子がそんなことを話すとは思えないし、確かに迷惑の部分が(特にうちの場合は)圧倒的に多いんだよなぁ、とちょっぴり、反省する。

 息子は「今日、学校で何したの?」と聞いても、「勉強した」、「給食、食べた」くらいしか話さない。高校時代の友人の二男Iくんが同じクラスにいて、よくしゃべる子だったので、その子を通じて、息子の様子を聞き出したり、後は迎えに行った時に先生をつかまえて話を伺ったり。
一度、「今日、英語の授業があったのですが、何でフランス語じゃないの?と怒ってkenくんは参加しませんでした」と言われたことがあり、これには夫が「息子の言うことはもっともだ!」と愛国心、剥き出し。国際語=フランス語だと信じているフランス人は少なくないのである。
 
 一週目最後の日の、金曜日。何とか大きなトラブルも起こさずに通学しているな、と安心していた矢先のこと。夕方、美術評論家で、美術イベントのオーガナイザーでもあるYさんと打ち合わせをしていた時に担任の先生から電話があり、息子がクラスメイトの男の子の顔を蹴った!と言われる。幸い、打ちみ程度で、大事には至らなかったそうだが、これには私も平謝りで、「向こうの親御さんにお詫びに行った方がいいでしょうか?」。その必要はない、と先生は仰る。また、状況を確認すると、二人組になってお互い質問をしあう、という授業内容で、その子が「次はkenくんが僕に聞いて!」と言ったら、突然蹴ったという。・・ひょっとして「僕を蹴って!」と聞き間違えたか??電話のやり取りを聞いていたY氏(小学生の息子さんが一人いる)は一言「何だか、大変そうですねぇ」。
ウィークリー・マンションに戻って、息子に問いただすと、うつむいて一言、「僕が悪いの」。「理由があったんでしょ?」と聞いても、「僕が悪い!」。こう言われてはこちらも先が続けられない。

 一週目は「学校はちょっと楽しい」と言っていたが、二週目に入ると「ちょっとつまんない」に変わる。プールの前日に「付き添いましょうか?」と、「必要ありませんよ」と言ってもらえることを期待しながら尋ねてみると、「それでは、お願いしますね」と言われてしまう。「前回は問題なかったんですよね?」と確認すると、「問題はなかったんですけど、念のため、副校長が付き添ったんです」。そう言われれば、行かざるを得ない。その週、夫は一人で大津まで剣道の修行のため赴いていたのだ。営業のアポを取っていた会社が運よく隣駅にあったので、アポの時間を朝の10時から9時に変更してもらい、1時間ほどで話を終え、太陽のぎらぎらする中をダッシュで学校に向かった。
登校前に体温を測るのを忘れていたので、保健室に息子を連れて行く。ついでに、クラスメイトを蹴った事件の時にお世話になった、保健の先生にお詫びをする。事件の後、息子は保健室で給食を一人で食べていた、とIくんから知らされていたので、隔離されたのか?と気になっていたのだが、「時々、クールダウンにここに来ていますよ」と言われる。温かい感じの先生なので、教室で気に入らないことがあると、保健室に駆け込んでいたらしい。そういえば、フランスの学校って保健室がないよな、と気づく。

子どもが学校にいる間、いつ担任から電話が来るか、とひやひやしながらも2週目は何事もなく過ぎて行き、Iくんも「kenちゃん、今日はいい子だったよ」と言う日が続く。

息子の登校最終日は1学期の最後の日でもあり、御礼(お詫び?)に名菓ひよ子を持って行くと、担任の先生はかなり疲れた顔をされていて(息子のせいだけではないと思うが)、ほとんど話もできず、また来年も来てくださいね、とはもちろん、言われなかった。
最後に、クラスメイト一人一人が書いた絵入りの手紙を文集のようにまとめたものを渡される。『いっしょにあそんでくれてありがとう』、『また遊びに来てね』、『フランスでがんばってね』という言葉が並び、これにはじーんと来た。

文集
(クラスメイトからの言葉が寄せられた文集)

その日は池袋で、友人と待ち合わせをしていたが、その前に約束通り、東武のおもちゃ売り場に行くと、息子はレゴ・シティの白バイパトロール(500円なり)を一つ選ぶ。親の懐具合に気遣う孝行息子なのだ。ただ、買い物の後、一言、「学校は嫌いだからもう行かない」。レゴ・シティのために我慢して通っていたのだろうか。

ところが、フランスに戻ると、息子はさっそく、ホースから七色の虹が出ている絵を描き、まもなく、「2010年は日本の学校で2年生になる!」とまで言い出した。我が家は2年に1度しか帰国しないし、今回の学校に再び体験入学を頼む勇気はない。ひょっとして、最初で最後の日本の学校への入学経験かもしれないが、少しでも楽しかったことが思い出として心に残ってくれれば幸いである。
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Re: お疲れ様でした。

マダムかおりんさん、こんにちは。

モンスターペアレンツの話は聞いたことがあります。私と同じ世代の親たちなのかな、と思うとちょっと・・。

フランスの先生は日本の先生と違って、勉強を教えることだけが仕事です。給食の時間や休み時間は他のスタッフが子供たちを見るし、もちろん、部活なんてものはないし。
それを考えると、日本の先生はほんと、たいへんですね。

うちの子も、2年後に日本に行くときはもう少し落ち着いているかも。でも、今度は、日本語力の問題で授業についていくのがたいへんかもしれませんが。

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プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター・コーディネーター。
96年に渡仏し、99年から10年間パリ発日本語情報誌『Bisouビズ』の編集長を務め、同時に日本の雑誌やWebに情報記事、コラムなどを寄稿。
2010年に日仏バイリンガルサイト『BisouJaponビズ・ジャポン』を立ち上げ、ジャパン・エキスポなどパリで行われる見本市で、日本企業や日本人クリエーターの出展をプロデュース、展示会の企画コーディネートの仕事を始める。
2018年に22年間のパリ滞在にピリオドを打ち、日本に帰国。

『BisouFranceビズ・フランス』
https://www.bisoufrance.com/

個人ブログ『湘南二宮時々パリ』
http://ninomiyaparis.blog.fc2.com/

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