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“おひとりさま”の老後をフランスで?

帰国した時に買った、上野千鶴子の『おひとりさまの老後』が、とても面白かった。上野千鶴子って、今まで新聞のコラムくらいしか読んだことがなかったのだ、何となく、フェミニズムとかジェンダーって言葉に抵抗(偏見?)があったので。でも、文章軽快、論理明快、なるほど、と思う具体例、エピソードが盛りだくさんで、実に読みやすいし、個人的にそのとおり!もっともだなぁ、と共感する部分が多かった。

まず、“おひとりさま”って言うと、未婚の若くない(って微妙な表現?)一人暮らしの女性ってイメージがあったけど(負け犬とほぼ同義語)、既婚女性であっても、統計的に見れば、夫が先になくなるケースが圧倒的に多いし、子どもがいても、やがては巣立って行くので、(ニートも増えているが)、年齢が上がるほどに、女性の“おひとりさま”率は高くなる、と1ページ目でぴしゃりと書いている。「80歳以上になると女性の83%に配偶者がいない」とあるが、これはきっと日本の話で、世界の統計をとればもっと高くなりそうだが。私も“おひとりさま”予備軍か、と考えながら読み進んだので、ますます面白く(切実に)読めたのだ。

本書は“おひとりさま”が快適な老後(および死)を迎えるためのノウハウや心得を、住居、人との付き合い、おカネ、介護などの項目に分けて、説いているが、『第2章 どこでどう暮らすか』は、私のような在仏日本人にとっては実にシビアな問題である。さすがにこの本に海外で暮らす日本人の“おひとりさま”例は載っていなかったが。
同年代のフランス在住歴の長い日本人女性が集まると、たまに、老後はフランス、日本のどちらで暮らしたいか?という話題に及ぶが、「定年後は日仏の間を行ったり来たりしたい!」なんて意見が今のところ多い。そりゃ、お金に余裕があって、元気なら、誰だってそうしたい。問題はその先、体が不自由になり、介護を受け、さらに施設に入らなければならなくなった時に、フランスと日本のどちらを選ぶか?そもそも、そうなる前に決めておかないと。やっぱり日本に帰ろう、と要介護の身体で、引越し準備をし、飛行機に乗って、新居で荷ほどき?なんて想像しただけでも寿命が縮まる。

夫がフランス人で、私より年上の友人は、「絶対、日本!フランスの老人ホームで、ステーキ&フレンチフライポテトなんか食べたくないわよ。やっぱりごはんに、納豆とお味噌汁じゃなきゃ」と言っていた。まあ、いくらフランスでも、老人ホームでステーキは出ないだろうし、ポテトもマッシュポテトの類であろう。
確かに私も、豆腐、納豆をはじめとする日本食が徒歩圏内で(杖や買い物カートを頼ってでも)買うことができて、日本のテレビが見られて、日本の映画やドラマのDVDが簡単に借りられて(老後の楽しみ!)・・、と考えればやはり、日本!と思っていたが、フランスでも豆腐はすでに自然食店に出回っているし、納豆だって、フランス人の健康志向がこのまま強まれば、普及するかもしれない。先週、サン・ラザール駅で声をかけてきたフランス人のおじさまは「日本人?私、納豆大好きです」と言っていたし・・。インターネット経由で日本のテレビも見られるようになり、DVDだって、ネット配信されるようになるだろう。
さらに、本書は、高齢者の一人暮らしには友人ネットワークが大切だ、と力説し(確かに)、「歳をとれば、移動はおっくうになり、困難になる。そこでハイテクの出番である」と、電話やインターネットの活用を奨める。まさに、メールを使えば、日本にいる友人とも時差を気にすることなく、気軽にコミュニケーションができる。これは在仏日本人“おひとりさま”の強い味方となる。

なんて、考えると、フランスの方が気候はいいし(日本の暑い夏と効きすぎのクーラーは高齢者にはつらい)、住宅事情もいい。あ、でも、治安は今のところは日本の方がいいか、それからサービス一般はフランスと比べ物にならないほど素晴らしいし・・。まぁ、今のうちから色々な可能性をさぐっておき、60代になってから決断すればいいか。今後、経済・社会状況がどう変わっていくか、分からないしね。

さて、本書で一点だけ、気になったのが「健康法などに頼るな、玄米菜食をすすめる友人もいるが、どんなことをしてもひとは死ぬときには死ぬ」というくだりだ。健康法は一日でも長く生き延びるために頼るものではなく、健やかに老いるためのもの。寝たきり状態になるのを一日でも先延ばしにしたい、長患いを避けたい、と考えてするものだろう。
大学生時代、タバコ好きの男の子が、「タバコを毎日吸うと寿命が15年縮まるなんていうけど、90歳で死ぬのも、75歳で死ぬのも一緒だよな」、などと他の愛煙仲間に言っているを横で聞きながら、90歳までぴんぴんしていてころりと亡くなるのと、肺がんで末期には苦しんで、苦しんで75歳で亡くなるのとではずいぶん違うけどなぁ、なんて感じたことを思い出した。

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No title

お久しぶりです。ず~っと以前に、色んな集まりで時々お会いしてました。

さて、このお一人様老後、ご近所に住む日本人画家さん(女性、60代後半)がやっていて、しかも一軒家でひとり暮らし、特に日本の物にはこだわらず(北海水産も誘ったけど、興味なし)、ステキに過ごされてるのを見て、あぁ、こんなのも良いな、と私も思い始めていたところでした。
どちらにしても、それなりに年金が受け取れる事が課題ですけどね、残念ながら・・・

そうなんですか・・・。

江草さん、こんにちわ。

上野千鶴子さんの本で、以前(といっても、10年位前。)職場の人に勧められて「うわの空」っていう本を読みましたが、その本も良かったですよ。(今回の記事の本は、かなり話題になってベストセラーになってましたが、残念ながら、まだ読んでいないのですが・・。)

私も、江草さん同様に、当初は上野さんと言えば、ジェンダー問題やフェミニストというイメージでしたが、意外と?書籍のほうは読みやかったです。

老後の生活は、今や?日本もフランスも厳しいかも?しれませんね・・。

日本は、税金増加の一方で年金は減少し続け、治安面では、おれおれ詐欺だの、老人をターゲットにしたバイク引ったくりだの、白昼堂々と大の大人が誘拐されたり、お金持ちの老夫婦宅には放火されたり、秋葉原での通り魔事件も記憶に新しいですし・・。無差別な凶悪殺人事件も多いですからね。

でもって、裁判員制度なんてものも始まってしまいましたから、穏やかな老後なんて、早々送れないかも?しれません。

気候も、地球温暖化傾向のせいか?日本は亜熱帯地方か?と思うような異常気象(強烈に暑いのと、ゲリラ豪雨。)が近年続いていますし。

どちらも、一長一短かも・・。
だから、日仏間を行ったり来たりがベストなのかも?しれませんね。

No title

megumiさん、お久しぶりです。

SOSママクラブは名前は残していますが、ほとんど参加しておりません。フランスって老マダムの一人暮らし、けっこう多いですよね。子どもも早くから自立しますが、老人も自立している、っていうか。
年金、頭痛いですねぇ。医療保険もひどい赤字みたいだし・・。

どっちもどっち

マダム・かおりんさん、こんにちは。

ほんと、日本もフランスも、どっちもどっち、って感じですね。
お金持ち老夫婦の放火はフランスでもありますよ。この前、ニュースで見たのは、宝石商の夫婦で、燃やされた家もかなり大きかった・・、こういう被害には縁がなさそうです。

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プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター・コーディネーター。
96年に渡仏し、99年から10年間パリ発日本語情報誌『Bisouビズ』の編集長を務め、同時に日本の雑誌やWebに情報記事、コラムなどを寄稿。
2010年に日仏バイリンガルサイト『BisouJaponビズ・ジャポン』を立ち上げ、ジャパン・エキスポなどパリで行われる見本市で、日本企業や日本人クリエーターの出展をプロデュース、展示会の企画コーディネートの仕事を始める。
2018年に22年間のパリ滞在にピリオドを打ち、日本に帰国。

『BisouFranceビズ・フランス』
https://www.bisoufrance.com/

個人ブログ『湘南二宮時々パリ』
http://ninomiyaparis.blog.fc2.com/

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