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半漁半X

 高校時代の同級生、のびたくん(『ドラえもん』ののびたに似てるからついた、あまり芸のないあだ名)が9歳の長男、ゆうくんを連れて、パリに遊びに来た。というのも、ゆうくんが、“日仏交流150周年記念 オルセー美術館コレクション特別展 こどもレシピ創作コンクール”(長いタイトルだ)でグランプリをとり、賞品が東京パリ往復航空券だったのだ。それで、今、作品写真と作文がオルセーに展示されているので、それを見に来たのだ。

のびたくんと会うのはほぼ20年ぶり。その間、一度だけ、私が今はなき『ダ・カーポ』に署名記事を書いていた時に、突然、「記事読んだ」とメールが来たことがあった。大学卒業後に大手広告代理店に入社したことは知っていたが、それ以降、彼が何をしているのか、結婚したのかどうかさえ、全く知らなかったのだ。

のびたくんがパリに来ることが決まってから、数回メールのやりとりをし、今でもその代理店に勤めていること(パレ・ド・トーキョーで行われる展示会にその会社が携わっているので、展示会開催直前の講演会+カクテルパーティの招待状を送ってくれた)、ゆうくんの他に2人の娘がいること、そして、漁師をしている(!)ことが分かった。日本時間の午前3時に書かれたメールに「出漁前のメールです」とある。

漁師?会社に勤めながら?日曜漁師か?ところが、パレ・ド・トーキョーのカクテルパーティで再会し、「おお、変わんないねぇ」なんてしらじらしく言いあって、すぐに気になっていた“漁師”の件を聞いてみると、現在、神奈川県の海辺の町に住んでいる彼は、天候の問題がなければ、毎日漁に出ているのだという。「いつ寝てるの?」と聞くと、往復の通勤電車の中、だそう。「うちの会社も、ついにタクシー券がなくなっちゃって」、とそんなバブル時代の産物みたいなもん、今の今まで残っていたんかい!と驚くが。しかし、広告代理店のプロデューサーと漁師を同時にやる、っていうのは、凡人にはマネができない。半農半Xっていうのは聞いたことがあるが、半漁半Xっていうか、漁は毎朝、会社だって、パートやフリー契約ではない、正社員なのだから、全漁全Xとでも言おうか?これは初めて聞いたよ。ちなみに、漁のギャラは魚で支払われるので、隣近所に配るとお返しに果物やお菓子などをもらったりするのだとか。物々交換経済である。
のびたくん、その他にも、雑誌に書評を寄せ、自宅庭でさとうきびを育て、ゆうくんの勉強を見て、と色々なことを、もちろんドラえもんの助けなどなく、一人でこなしている。とてもじゃないけど、怠けものの私にはマネできません。こんなすごい人であったか!高校時代には見抜けなかったなぁ、と尊敬する。
「もっと、子どもの勉強を見てやりたいから、早く会社を辞めたいんだよね~」と言ったので、じゃ、「辞めて、学習塾開けば?」と提案(?)したところ、「他人の子どもなんか見たくないよ」と明快な理由で却下される。将来は漁師をしながら、和菓子屋を開きたいのだそうだ、自宅庭でとれた砂糖を使って。なんか、あっさり、実現しそうで怖い。
碁会所

ちなみに、漁師になったきっかけは、家を建てた時に雇った庭師が、のびたくんの太腿を見て、「その足ならぜひ漁師になりなさい」と勧めたから。その人は庭師兼漁師なのだとか。
この大不況時代の乗り切り術として兼業は悪くない。いくつか仕事があれば、収入が0になる可能性は低いし、さらに、生業の一つが食糧確保につながるものであれば、飢え死にする心配もないしね。

(写真 碁に夢中のゆうくんをパリの碁会所に連れて行く。若きフランス人棋士相手に対局するゆうくん。手前は二人の対戦を見ることもせず、退屈していた我が息子)
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スーパーのびた君親子ですね!

江草さん、こんにちは。

のびた君というあだ名が似つかわしくない?パワフルなのびた君似の?お父様なんですね。

江草さんのおっしゃるとおり、お父様はサラリーマン生活から卒業しても?半分漁業を営みながら、和菓子屋さんを経営する夢も実現可能なのでは?

既に?遠距離通勤をものともせず?出勤前に漁に出て、会社勤めするなんて、並大抵の?体力では出来ません。いくら好きなことであっても、余力がないと継続しませんから。
加えて?お子さんの勉強まで教えてらっしゃるなんて、素晴らしいですね。

私の職場にも、実家の農家の手伝いを休日にする人はいても、平日会社に行く前に家業を手伝ってから来る人は、さすがに聞いたことないですね。しかも、漁は特に・・・。

息子さんのゆう君も、写真を見る限り利発そうなお子さんで、囲碁も強そうだし、絵画の才能もあふれる素晴らしいお子さんで、将来が楽しみですね。

サラリーマンも、昨今は特に儲かる職業ではありませんが、農業も漁業も同様で、天候に左右されますし、設備投資や経費が嵩む割には儲からない職業ですから・・・。

低収入だけならいざ知らず、定収入がなかなか期待出来ないので、専業農家はリスクが大きいんですが、のびた君似のお父様のような働き方は確かに理想的です。

でも、このように健康的にバランスよく両方とも器用にこなせる方は、なかなかいらっしゃらないでしょうね。

合気道で体力作り

マダム・かおりんさん、こんにちは。

のびたくんは中・高校時代は文化部に属していたのに、大学で急に合気道はじめて、それで体力つけたようです。

漁業に関しては、農業は種をまいてから作物の収穫までに数カ月かかるけど、魚は海に行けばすぐに手に入るんだから簡単、とこともなげに言ってましたが、でも、毎朝3時に起きて、海に出る、ってそれだけでもたいへんなのに、その後寝ないで会社に行く、ってすごいですよね。

ゆうくんは、そのとおり、頭がよくて、優しくて、お父さんの言うことをよくきいて、いい子の見本、みたいな男の子でした。

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プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター・コーディネーター。
96年に渡仏し、99年から10年間パリ発日本語情報誌『Bisouビズ』の編集長を務め、同時に日本の雑誌やWebに情報記事、コラムなどを寄稿。
2010年に日仏バイリンガルサイト『BisouJaponビズ・ジャポン』を立ち上げ、ジャパン・エキスポなどパリで行われる見本市で、日本企業や日本人クリエーターの出展をプロデュース、展示会の企画コーディネートの仕事を始める。
2018年に22年間のパリ滞在にピリオドを打ち、日本に帰国。

『BisouFranceビズ・フランス』
https://www.bisoufrance.com/

個人ブログ『湘南二宮時々パリ』
http://ninomiyaparis.blog.fc2.com/

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