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町の映画館

私の住むパリ郊外、コンフラン・サントノリン市には映画館が二つある。一つは大手映画館チェーン、パテPathéの上映室が9つもある、シネコンってやつだ。もう一つは市役所の隣にある、小さな映画館、その名もシネヴィルcine ville 、直訳すれば“町の映画館”である。
パテの映画館は、我が家から歩いて10分のところにあり、しかも私は見放題パスを持っているのでよく出かける。一方のシネヴィルまでは車で10分かかるし、今まで行ったことが一度もなかった。
ところが、先々週封切りのクロード・シャブロルの新作、ジェラール・ドパルデュー主演の『Bellamy』がなんとパテでは1週間で上映打ち切り。シネヴィルで「月曜14時半から上映」と情報誌にあったので、出かけてみる。

何百台もの車が止められる専用駐車場があるパテと違い、まずは市役所前の有料駐車場に車を止める。館内に入ってみると、待合室の奥にあるチケット売り場には3人ほどおばあちゃんマダム達が並んでいる。まあ、平日の午後だし、シャブロルの映画っていつもおじいちゃん、おばあちゃんの観客が多いのだ。「ブログのために写真を撮るか」と外に出て、カメラでパチパチやっていたところ、いきなり大型バスが入口に横付けになり、コンフラン中のおばあちゃんが集まったか!と思うくらいの数のたぶんみんな80歳を超えているだろうと思われる老マダムたちがどーっと降りてきて、待合室がいっぱいになる。市内にある老人ホームの送迎バスか?でも、それなら誰かがまとめてチケットを買ってあげればいいのに、全員がチケット売り場に並び、中には杖をついている人も。ちなみに、おじいちゃんは数えるほどしかいない。うーん、ジェラール・ドパルデューに想いをよせるおばあちゃんたちが集まっているのか?(美男俳優ジェラール・フィリップならともかく・・)フランスも女性の平均寿命が高く、つれあいを亡くしてから老人ホームに入る女性の入居者が多い、ということか?

町の映画館

(通りを隔てて家が並んでいる、町の映画館)

やっとチケットを買い、地下にある上映室に降りていく途中、杖をついて手すりにつかまりながら階段をゆっくりゆっくりと降りている老マダムがいたので「大丈夫ですか?」と声をかけたが、少しむっとした顔をされる。年寄り扱いされたくない頑固ばあちゃんか。
上映室はきれいで、300席くらいある。真ん中より後ろくらいをなぜか老人ホームグループが席を占めていて、引率の職員のような人が「マダム○○こっちです!あ、マダム△△ここですよ!」なんて声を張り上げている。そして、その集団を避けるかのように、数組の老夫婦が前の方の席に座っていた。
この様子では観客の平均年齢は80歳を超えてるかも(当然、ダントツに若いのが、私とその職員らしき人)。しかし、シャブロルの新作は殺人事件もの、のはず。おばあちゃんたちの心臓によくないんじゃないかなぁ、などと思っていると、映画が始まる。ところがオープニング・クレジットにソフィー・マルソー、ダニエル・ブーン・・、え?こりゃ、評判イマイチの倦怠期を迎えた夫婦のどたばたコメディ『De l’autre côté du lit』じゃないか?そう、上映室を間違えたのだ。

おばあちゃんたちに気を取られて彼女たちの向かう上映室へとついつい入ってしまったのだ。そういえば、普通、複数の上映室がある映画館では捥ぎりの人が「階段上がって右です」とか教えてくれるのに、それがなかったなぁ。と、慌ててそこを出て、『Bellamy』の上映室を見つけると、先ほどの3分の1くらいの小さな部屋で、観客が6~7人しかおらず、こちらは定年を迎えた直後、と言った年齢のムッシューばかりであった。ちなみに、両作品は上映開始時間が同じだったのだが、おばあちゃんたちに見る映画の選択権はなかったのかしらん?

このシネヴィルは、コンフラン市から援助を受けてなんとか経営が成り立っている、と聞いたことがある。町の映画館なので、子どもむけ、大衆向け娯楽作品映画が中心だが、マニアックな作品や一般受けしなさそうなドキュメンタリーの佳作なども上映ラインナップに含まれている。何より、非フランス語映画の字幕上映にこだわっているところがいい(コンフランのパテは全てフランス語吹き替え)。個人的には見放題パスの使えるパテ(近いし)をできるだけ利用したいところだが、パテではやっていない作品をパスの使えるパリの映画館まで見に行く電車賃を考えれば、入場料はとんとんなので、地元の小さな映画館を少しでも助けるためにも、たまには足を運ぼうか、なんて思った。老人ホームのおばあちゃんたちのためにもね。まあ、単に老人ホームの送迎バスがパテに行けばいいだけの話かもしれないが。
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プロフィール

江草由香

Author:江草由香
編集者・ライター・コーディネーター。
96年に渡仏し、99年から10年間パリ発日本語情報誌『Bisouビズ』の編集長を務め、同時に日本の雑誌やWebに情報記事、コラムなどを寄稿。
2010年に日仏バイリンガルサイト『BisouJaponビズ・ジャポン』を立ち上げ、ジャパン・エキスポなどパリで行われる見本市で、日本企業や日本人クリエーターの出展をプロデュース、展示会の企画コーディネートの仕事を始める。
2018年に22年間のパリ滞在にピリオドを打ち、日本に帰国。

『BisouFranceビズ・フランス』
https://www.bisoufrance.com/

個人ブログ『湘南二宮時々パリ』
http://ninomiyaparis.blog.fc2.com/

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